「広告のフロンティア拡張は今」 小杉幸一さん×ラフォーレ原宿「LAFORET HARAJUKU GRAND BAZAR 2017 SUMMER」チーム座談会 — 2018ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Dカテ(デザイン)シルバー受賞作品

設計方と表現力

小杉:どちらが大切ということではない。ポスターとしての一枚でなく、考え方の一枚絵をつくれるかが大切。クライアント含めたあらゆるスタッフが「なら自分はどうする」と。ツイッターならこうしよう、とか。そういうダイナミズムが広告的なデザインの強みだし、これからやっていかなくてはいけないことだと思います。

長谷川:ビジュアル的なものって言葉にできないものがあるということが、素晴らしくて。そう仕上げようが、コンセプトが揺らいでしまうと全然ダメになっちゃう。これはコンセプトのモノなんだろうな。もちろん色味とか仕上げも大事なんだけど、方向性がすごく大事。

浅田:タイプミスのパターンをたくさんつくって、これ(メインで使っているタイポ)を見つけた瞬間にあとは大丈夫だ、という感覚がありました。

長谷川:コピーのニュアンスやビジュアルの雰囲気で持っていくよりは、西洋的な考え方かもしれない。ラフォーレという人格があるとしたら、この人はどうしゃべるのかというのをバチッと決めて。そこからコンセプトを決め、デザインに入っていく。

小杉:日本のコミュニケーション独特なものに、「間」を使ったコミュニケーション。それも素晴らしいし日本ならではと思いますが、現代のこの混雑した中で、あえて緩くして見た人に委ねるようなものなど、人格としてのコンセプトがしっかりしていないと機能しない気がしています。

長谷川:そういう主観的なものにジャッジされたり。日本はほぼ日本人ばかりだから、それが染み込みやすいんでしょうね。例えばロンドンでやろうとしたら、色々な人種がいるからしっかり何を言おうとしているのか分からないと、全然響かないですよ。そういう意味では日本は特殊だと思います。

小杉:ACCのBC部門の中でデザインカテゴリーというのはどうですか。

長谷川:ほかのデザイン賞だと、ワークしているかしていないかよりも、このポスターが美しいかどうかでジャッジするのが多い。それはそれでいいんだけれど、広告の枠の中で考えたものって、まず解かなきゃいけない問題がある。決まったターゲット、予算といったいろんな制限の中で、一番うまいこと考えて出したものという見方をしないといけない。

デザイン的観点で言うと、そういうものを評価する場所がこれまでありませんでした。これが何十億かけてやったテレビのキャンペーンと比べてどうかということではなくて、解かなきゃいけない問題と対になって評価されるようなものがあってもいいんだろうな。この部門はそれに近いものという期待をしています。仕上がりのよさを見るというよりも。好き嫌いで審査しちゃうと、再現性がないというか、上積みされていく感じがありませんね。

小杉:まさにおっしゃっているように、好き嫌いで評価してはいけないと審査委員も考えていました。この部門はアウトプットだけで評価は絶対にしないようにしています。背景にみんなが共感できて、コミュニケーション設計がちゃんとあるかどうか。今、この表現でなければいけないという背景と作り手の意思がちゃんとマッチしたものが去年は上位に来ていたのかなと思います。

でもまだまだ、「時代と背景がこうだからこれはデザインとして評価されるべき」という議論はそんなにされていなかったので、今年はそこもピックアップできるような審査方法を共有していきたいです。

すべてではないですが、国内のデザインの賞の評価軸ってどうしても閉じていってしまう傾向があります。デザインこそ共通言語なので、あらゆる審査委員が審査の場で思ったことをどんどんフラットに話し合えたらデザインの活性化につながるのかなと思います。デザインカテゴリーで僕が大切にしたいのは、「総合力」。

「総合力」と言っても、たくさんあればいいということではありません。設計力と表現力。またブランドのための視点であれば、新聞広告でも、ロゴデザインでも、なんでもいいんです。

逆に目立ってないものも見てみたい。「これは評価されないんじゃないか」と出品をためらうのはもったいない。この部門はブランドのためにどう結果を残したか、それが世の中でどう見えていたか、デザインだからこそ全部の面で評価できると思うんです。目に見えるモノすべてを評価の対象にしたい。それがブランディングデザインだと思います。自分に自信を持ってどんどん応募していただけたらと思います。

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一般社団法人ACC
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