言語化能力を高める4つのステップ
ソーシャルメディアを見ていると、「言語化が大事だよね」とか、「言語化能力を高めるにはどうしたらいいのか」といった話がよく出てきませんか?言語化というのは、普通に考えると「言語にすること」。ソーシャルメディアで情報発信していること自体「言葉にしている」のに、なぜわざわざ「言語化」と言うのだろうと疑問に感じ、みなさんが言っている「言語化」の意味を細かく分析してみました。
すると、なんとなくこういうことだろうと。
①事象・具象(世の中のできごと)をよく観察すること。そこから、②複数の事象の共通点を見つけ出し、③話を伝える相手のことをよく理解して、④相手にわかりやすく表現する。
この4つのステップが「言語化」と表現されている。これが上手にできる人が「言語化能力が高い人」「言語化がうまい人」と言われていると分析しました。
この4つのステップを、ぞれぞれ「能力」に置き換えてみましょう。
①事象をよく観察する能力は「解像度」
②複数の事象に共通する何かを発見する能力は「抽象化能力」
③伝える相手をよく理解する能力は「共感力」
④相手にわかりやすく伝える能力が「表現力」
言語化の能力を高めるには、この4つの能力を総合的に高めていく必要があるのではないかと考えます。基本的には、自分が今どの能力を発揮しているのかを意識することだと思います。筋トレする時も、鍛えたい筋肉を「使っている」イメージをすると効率がよくなると聞きます。
今回は、この4つの能力の中から、おそらく一番難しいと思われる②「抽象化能力」に絞って、どうすれば抽象化ができるのか、それをどのようにコミュニケーションに活かしていくのかという話をしたいと思います。
さて、「抽象的」と聞いた時、みなさんはどのようなイメージを持たれますか? 話が漠然としてわかりにくい時に「話が抽象的だよ」などと言いますよね。このように「抽象的」という言葉は、どちらかというと悪いイメージで使われることが多いのではないでしょうか。
そもそも「抽象」とは、英語の「abstract(アブストラクト)」を日本語に訳した言葉です。しかし「アブストラクト」という言葉の意味は、日本語の「抽象」のイメージとは全然違います。例えば、英語の論文やガイドラインなどを見ると、最初に「Abstract of the thesis」というページがあります。ここには、長い長い論文から、一番大事なエッセンスを抽出した骨子が記載されています。
サマリーという言葉がありますが、ここで「サマリー」ではなく「アブストラクト」が使われているのには理由があると考えています。論文を読むのは他の研究者です。研究者は、その骨子を使って、また別の論文を書いたりするものです。別の論文が生まれると、その骨子は、2つの論文に「共通する重要な骨子」になりますよね。アブストラクトには、このように複数の何かに「共通する重要な要素」というニュアンスが含まれています。
「抽象的な説明」というと、「的を射た説明」ということになりそうですよね。それなのになぜ、日本では「抽象的=わかりにくい」という悪いイメージになったのでしょうか。もしかしたら、複数の物事に共通する本質を抜き出す「抽象化」がちょっと苦手な人が多いのかもしれません。そのため、抽象的な話や説明は人気がなくなってしまったのではないでしょうか。
抽象的な説明を、本来の意味である「わかりやすい説明」にするには、「うまい抽象化」をしなければなりません。ここからは、うまい抽象化の仕方と、抽象化がもたらすメリットについてお話したいと思います。