【前回】「#SXSW2019 日本から世界に挑む!日系企業出展事例①:NEC」はこちら
今回は、SXSWインタラクティブ部門のトレードショーに出展した日系企業の中から、NTTを紹介する。
NTT
すべてはSXSWから始まった 新たな価値提供へのアドバイスも
2018年のSXSWで生まれた出会いが、2019年につながった。今年、NTTは東北新社と二番工房との3社合同でブースを出展した。昨年のSXSW2018において、NTTは自社で開発を進める触覚コンテンツの体験・作成・共有システム「Comptics」を展示。そのブースへ東北新社と二番工房が訪れたことがきっかけで、「Comptics」を活用したプロダクトの共同開発に発展したのだ。
今回3社合同で展示を行ったのは、VR映像と「Comptics」を組み合わせることによって新たなVR体験を生みだす「ハプティクスVR シアター “ME-HADA”」。VRゴーグルと「Comptics」のスリーブを併せて装着すると、視覚と聴覚だけでなく、触覚も一体となった体験が可能になる。
共同開発に至った理由について、二番工房の石井鳳人氏は、「VRは視覚と聴覚が完全に支配される代わりに、首から下には何の作用もなく、物足りなさを感じていた。『Comptics』の技術を使えば、その不足のひとつを補える可能性があると感じた」と語る。開発に際しては、3社で複数回にわたって議論を重ねたという。
今回の出展で提供した体験は、ビールに浸かる、油に揚げられるなどの数種類。「Comptics」の技術には微弱電流を使用しているため、周波数を変化させながらさまざまなバリエーションの映像を組み合わせ、映像と触覚が合うと思われるものや、不思議な感覚を味わえるものなどを探っていった。
体験した参加者の反応には、好意的なものもあれば、そうではないものもあったという。なかには、聴覚障がいのある人への新しい価値提供として、音声に代わる感覚を触覚で提供できればおもしろいのではないかといった意見も聞かれた。また、例えばビールに浸かってシュワシュワした感覚を味わうことによって、ビールをよりおいしく飲めるようになるなど、広告にも応用できるのではといった話も上がったという。
「ビールに浸かる、油に揚げられるなどの体験は、通常であれば絶対にできないこと。不可解な状況でありながら、それを抽象的に感じるという不思議な体験を突き詰めていきたい」と石井氏。
今後は、あるオブジェクトを触ると、触覚も含めてリアクションが感じられるようなインタラクションも追加していく予定。さらにその先には、触覚の体験を腕だけでなく全身に広げたり、微弱電流による刺激だけでなく、握られる、押し付けるなどの触覚も複合的に組み合わせ、より複雑な触覚を実現したりすることで、新しい映像体験を創造していきたいと考えている。