【前回】「#SXSW2019 日本から世界に挑む!日系企業出展事例②:NTT」はこちら
今回は、SXSWインタラクティブ部門のトレードショーに出展した日系企業の中から、東芝を紹介する。
東芝
食育問題の解決となるアイデア 欧米人が前向きな反応示す
東芝は、子どもの食育をサポートするアイデア「Sizzleful(シズルフル)」のプロトタイプを展示した。
これは、親が子どもに食事をさせようとしたときに嫌がって食べないケースがあることから、子どもの食事に対する子育てする親のストレスを軽減し、さらに、子どもに食事の時間をもっと楽しんでもらえるようにと考案。料理が入った容器のふたを開けると、例えば、料理が天ぷらであれば揚げている様子を、青菜のおひたしであれば刻んでいる様子を、お寿司であれば日本らしさを、お盆に映し出されたイメージビジュアルや音で楽しめる。
開発の狙いについて同社デザインセンター デザイン統括部の駒木亮伯氏は、「フードアナリストのとけいじ千絵氏と連携する中、食事はただ食べるだけではなく、見たり、聞いたりと五感を使って食べることが重要だと気づいた。このように遊び心のある要素を取り入れるによって、食べ物の好き嫌いが激しい子どもや気難しい子どもに対しても、より食事に興味を持たせることができるのではないか」と話す。
社会課題を起点にフィールドワークを行い、着想し、実現までの期間は約10カ月。収益への結びつきが不透明なアイデアを大企業で形にするのは簡単ではないが、コンセプトに共感した研究所や事業部のキーパーソンを巻き込み、実現に至ったという。
SXSWはベンチャー企業から大企業に所属する起業家、政治家や俳優などが多様なイノベーターが数多く訪れ、新たなアイデアを展開させていく場であることから、そこで得られたアイデアを社内に還元してさらに新たなアイデアにつなげられればとの思いで出展。食育をテーマにしたビジネスは難しいと感じる一方で、SXSWの参加者のうち特に欧米人は、社会的な課題の解決ができるという点に興味を持っていたという。「食育はかなり大きな課題。そこに共感していただけたことが、新たなインスピレーションになった」(駒木氏)と、好感触だったようだ。
これからは、「Sizzleful」のように、大企業であっても新たなアイデアをゼロから生み出し、そのほかの部署も巻き込みながら実現させていく活動を広げていきたいという。また、駒木氏は、「他社とも協業しながら、『Sizzleful』も含め新たなアイデアを製品化していきたい」と意欲を見せた。