かけがえのない仲間たちと乗り越えた、カンヌでの5日間
今年は、世界中から25人の若手が集まりました。アジアからは、インド、インドネシア、そして日本から1人ずつ。その他は、欧米のエージェンシーで働く若手クリエーティブが集まりました。
プログラムが始まる前、アカデミーの学長のBob Isherwoodからは“It’s five years learning in five days.”という言葉があり、濃厚な時間が待っていることを予感させましたが、プログラムの中身は想像以上でした。カリキュラムは朝9時から夜19時までみっちりと講座が組まれています。ただ、講座と言っても一方的に何かを教える講座ではなく、議論する場という雰囲気でした。
講師陣も大変豪華で、Nike Fuel BandなどをR/GAで手がけ、最近Appleに移ることが発表されたNick Law。Harvey Nicholsの「freebies」や「Sorry, I Spent it on myself」や、John Lewisの「The Boy and The Piano」、Marmiteの「Gene Project」などを手がけた(全部好き)Richard Brimなど、世界の広告業界のトップクリエーターをはじめ、UBERやGoogleなどクライアントサイドに移って手腕を振るうクリエーティブディレクター、ハリウッドで活躍するメーキャップアーティストや、脳波とクリエーティビティの関係性を研究する研究者まで、様々なタレントが代わる代わる講義します。
アカデミーで教わったことすべてをここには書ききれないのですが、講座のエッセンスを書いておきたいと思います。
Paulie Dery (UBER ECD)
BE SELFISH。良いクリエーティブディレクターになるためには、SELFISHであるべきだ。リーダーシップやチームワーク以上に自分の欲求を見つけ、叶えることが良いクリエーティブをつくる一番の方法だ。
インハウスのクリエーターができるのは、エージェンシーを良い仕事に導くことだ。エージェンシー対クライアントの構図ではなく、一緒に良いものをつくるという意識と体制づくりが大切。
Rory Sutherland (Ogilvy Vice Chairman)
ブランドとは、買う人のリスクを減らすことである。
Nick Law (当時 Publicis Groupe CCO)
自分がPRODUCTであるという意識をもて。エージェンシーにおいて、クリエーティブパーソンこそがPRODUCTである。クライアントはあなたという商品にお金を払っている。
自分がこの業界で成功したのは、BIG TABLEに座っていなかったからだ。必ずしも「主流」にいる必要はない。
Richard Brim (adam&eveDDB CCO)
忘れられるようなものをつくるな。2018年に世界で流れた広告のうち、4%がポジティブな反応、7%がネガディブな反応、そして89%が覚えられていない。89%のものは絶対につくるな。
忘れられないような良い広告クリエーティブをつくる方法は、クライアントと友達になることだ。
アカデミーの参加者も負けず劣らずの熱量で、講師陣以上に一緒に参加した24人からも学ぶことの多い5日間でした。講座中の質問は基本的に参加者全員から自発的に行われ、質疑の時間が毎回伸びてそのまま休憩なしに次の講師の講座に突入するとことがほとんど。その様子を見て学長のBobは「今年のクラスは間違いなくこれまでのアカデミーの中で最高のクラスだ」と言っていました。
講座が終わったあとも、毎晩朝4時まで25人で飲み明かし、出会ってたった5日しか経っていないのに最後は寂しくて泣いてしまうくらい仲良くなりました。ほとんどの参加者がアメリカのエージェンシーで働いていて、仕事の取り組み方や働き方の違いはありましたが、持っている課題意識や悩みは皆同じでした。
英語でコミュニケーションをとるうえで意識したこと
僕は幼少期をエジプトとドイツで過ごしたものの、それ以降はずっと日本で生活しているので、英語はネイティブではありません。基本ノリとキャラでカバーしています。それを踏まえて、クラスメイトや講師陣との関係性を築くために行ったことをご紹介します。
●事前にもっていた課題意識
・5日間という短期間で講師陣や参加者たちに興味を持ってもらいたい。
・短期間で海外の聞き慣れない名前 x 24人を覚えるのは結構大変。
・出身の国も違う上に、初めて会う人たちなので共通の話題がない。
●やったこと
#筆ペンチャレンジ
参加者全員の名前を、漢字の当て字で書きました。
「私は日本のコピーライターなので、あなたの名前を日本語に変換します」と自己紹介で宣言。まずは学長の名前を、事前に漢字にしてその当て字の意味を紹介。100均の筆ペンを人数分持参し、参加者全員にお土産としてプレゼント。期間中にも定期的に、書き終えた参加者の名前と当て字の意味を本人にプレゼントしたうえで、アカデミーのメッセンジャーに投稿していきました。結果的に、参加者全員から自分の名前もRyoに書いてほしいと言わせる構造をつくりました。そうすることで共通の話題も生まれ、5日間の間に24人全員と1対1で話す機会が生まれ、自分自身も一度当て字を考えるプロセスを経ることで参加者全員の名前をスムーズに覚えることができました。