ホプキンスから始まった「これまでの広告はオワコン」!?広告の歴史を学ぶ その①

「これまでの広告はオワコン」を96年前に始めたホプキンス

フェルドウィック氏はそのような広告関係者に対する偏見を否定し、「広告関係者は過去を無視しているのではなく、次の3つのやり方で過去を扱っている」と考えます。それは次の3つです。


1.「正しいやり方を啓蒙」型
2.「黄金時代」型
3.「新時代はこれから」型

最初の「正しいやり方を啓蒙」型というのは、ある意味、自然科学の理論の発展に似ています。実はこの語り口がいまでも主流で、フェルドウィック氏もBMPが見出したアカウントプランニングのアプローチは、この考え方に近かったと述懐しています。

そしてこの考え方の最も古い例は、クロード・ホプキンス氏の1923年の『Scientific Advertising(直訳は科学的広告、邦訳では「広告マーケティング21の法則」』です。ホプキンス氏が「科学」という言葉を使った通り、広告は過去において直感やセンスによって作られていて、自然の法則のような科学的水準を持たなかったが、今やそれはギャンブルではなく、確実なビジネスの方法だと説いているわけです。

ホプキンス氏は、ほぼ1世紀近くも前にそのような「正しい方法」を見つけた、と言っているわけですが、このような啓蒙型語りは、何度でも繰り返されています。特に、「科学的理論」が紹介されるたびにそのような語りが横行します。「〇〇はオワコン」というのがその特長で、代わりに「〇〇の時代」というのが続きます。そしてそのたびに過去が葬り去られます。いまでは例えばビッグデータによるマーケットミックスモデリングやAIによるデータアナリティクス、ニューロサイエンス、行動経済学など。多くは世の中の社会的な変化や広告の外からの科学的手法の発見や進化に影響されて起こります。

このアプローチの問題点は、新しい知識を取り入れて発展するのではなく、「今のやり方は間違っている、これをやるべきだ」という二者択一を迫ることにあります。また、このような啓蒙の姿勢には、それが唯一の「正しさ」であり、たとえ他人が拒否してもそれをすることがその人のためであるという錯覚に陥りかねないことです。

そもそも過去を捨てゼロからより良い未来を作り出すというのは、それほど単純なことではありません。またいちいち全部否定していては、過去を吟味することなく良かったものまで捨て去ってしまう可能性もあります。マーケティングや広告担当者は自分も含めて新しいもの好きが多いですが、「新しさ」には常に気をつける必要があります。

次ページ 「「マッドメン」大好き! 昔は偉大な広告が生まれたのに今は・・・」へ続く

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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