戦略そのものが持つクリエイティビティを引き出すとき — カンヌライオンズ審査レポート 前編

戦略こそクリエイティビティを持つもの

クリエイティブストラテジー部門とは一体どんな部門なのか? まずはカンヌライオンズWebサイトに記載されている文章をそのまま抜粋すると、

The Creative Strategy Lion will celebrate the idea behind the idea, how strategic planning can redefine a brand, reinvent its business, and influence consumers or wider culture.
クリエイティブストラテジーライオンは、背後にあるアイデアと戦略的なプランニングが、ブランドを再定義し、そのビジネスを再発明・再創造し、消費者やより幅広い文化に影響を与えることができるかどうかを評価する。

と書いてあるのだが、実際の議論では、「戦略」そのものが起爆剤となり、「ブランドやビジネスのチャレンジに大きく寄与したか」、「そして実際の施策そのものが、その企業全体、さらには業界に影響を与えたか」、「短期的ではなく中長期的な視点を持って取り組んだか」が主な評価ポイントとなった。つまり、クリエイティブのアイデアも評価するが、一番評価するのは「戦略そのもの」であるということだ。

戦略の語源は「戦わずして勝つこと」である。戦略の力でクリエイティブを唯一無二のものに昇華させ、戦略の力で最短最速で顧客にリーチさせ、戦略の力でエグゼキューションを最安で実施できて、戦略の力で最長最大の効果を出し、戦略の力でブランドのチャレンジを克服し、戦略の力で新しいビジネスパーセプションを獲得できたのか。クリエイティブストラテジーの審査は、まさに「戦略そのものがもつクリエイティビティを評価する場」であった。

私は、アクセンチュア インタラクティブという立場も踏まえ、”reinvent its business(そのビジネスを再発明・再創造したか)”という部分を意識的に重視しながら、本審査で議論を行ってきた。

最初は、とにかくPCとずっと向かい合って審査を行う無言の部屋。このステップが終わると喧々諤々のディスカッションへ。

次ページ 「「性差」を切り口にした顧客体験の再創造 – VOLVO (Grand Prix)」へ続く

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