その技術を独自に身につけ、米国を中心に映画やMVなど映像制作の現場で活躍したスクリーミング・マッド・ジョージさん。近年は自身の作品を作りながら、大阪芸術大学映像学科の客員教授として若手の指導に力を入れている。
ハリウッドで磨き上げた特殊メイクの技術
「特殊メイクと聞くと、日本ではメイクアップ・アーティストと誤解されることが多いのですが、正確には“スペシャル・メイクアップ・エフェクト”。つまり特殊効果・造形とメイクアップが融合したような仕事なんです」と、スクリーミング・マッド・ジョージ客員教授(以下 マッド・ジョージ客員教授)は説明する。
俳優の顔をモンスターへと変えるメイクアップを施すことはもちろん、恐竜のパペットやエイリアンなど、この世に存在しないクリーチャーのモンスタースーツを製作することも、特殊メイクの仕事だ。
「この仕事は、背景となる美術をつくるわけではなく、被写体そのもの、物語の中の一つの現象となるようなものをつくります。だから映画の脚本をよく理解した上で、監督と同じ目線に立ち、被写体のキャラクター性や世界観までを踏まえてつくりあげることが求められます。さらにハリウッドでは、それが本物の生き物のように見えるリアリティが原則です」。こうした技術が『ポルターガイスト2』『エルム街の悪夢4』『帝都大戦』など、誰もが知る数々の映画の中で生きている。
中学生の時、サルバドール・ダリの絵画を見て衝撃を受けたマッド・ジョージ客員教授は、本格的にアートを学ぶべくニューヨークへ。大学ではアナモルフォシスの技法を使った実験的な作品や映像をつくる一方で、パンクバンドを結成し、ライブ活動も。
「当時、血糊を仕込んだゴムの内臓を使うショックアートパフォーマンスなど、今の仕事に通じることを自然とやっていましたね(笑)。振り返ってみると、ダリに始まり、アート、音楽、映画と、これまで出会ったあらゆるものに触発され、そこに興味を持って取り組んできたから、いまの自分があると思います」。
8月10日から、大阪芸術大学スカイキャンパスにて「特殊幻視覚アートショー スクリーミング・マッド・ジョージ展」が始まる。本展は高校時代に描いた漫画やデッサン、大学時代の実験的な作品、パンクバンドの映像、ハリウッド映画で使われた特殊メイクのデザイン画やメイキング写真など、まさに回顧展ともいえる展示。また、近年製作中の「イリュージョニスティック・シュールリアリズム」をテーマにした作品群、同客員教授のもと授業で制作された映像学科卒業生の作品も並ぶ。
「僕の授業は、他では体験できない実験的な作品づくりを体験できる場になっていると思います。僕自身、常に新しいことに挑んでいきたいし、自分がすでに持っている技術を守り続けることだけはしたくありません。自分の中に常に新しいものを取り入れて、自分の容量をもっと広げていきたいと考えています」。
スクリーミング・マッド・ジョージさん
編集協力/大阪芸術大学