12の専門キャスティングユニットによる対応力が急成長の秘密
“超”総合キャスティング会社を標榜するエイスリーは、2016年9月期に3.5億円だった売上高が、2018年9月期に10億円を突破し、来期は20億を目標にするなど今、急成長を遂げている。
同社では広告、プロモーション、イベント施策などへの芸能人のキャスティングはもちろん、インフルエンサーやYouTuberを起用した施策においても、様々な展開に応じた提案をしている。「対応できないジャンル、対応できない展開はない」とまで言い切り、柔軟な対応力を強みとする同社のもとには、毎月500件近いキャスティングの相談が寄せられている。
メディアや消費者のニーズの変化、特にZ世代が支持する芸能人やインフルエンサー、YouTuberなどが細分化している現在、ターゲットに響くキャスティングは容易ではない。また、従来型の「タレント」「インフルエンサー」など特定のジャンル専門のキャスティング会社では、多様化するクライアントのニーズにワンストップで対応することや、クロスメディア展開といった複雑な施策に柔軟に対応することが難しくなっている。
そこでエイスリーでは、「広告」「イベント」「インフルエンサー」「YouTuber」「ティーンズ」「プロフェッショナル」「ジャパンカルチャー」「動画」「グローバル」など、ジャンルに特化した12のキャスティングユニットをつくり、案件に応じ最適なユニットが対応し、場合によってはユニット間でも連携して共同プランを作成する。全国規模のCM、オンラインキャンペーンから、個人の披露宴など、あらゆる規模や目的に幅広く対応することが可能だ。
エイスリー 代表取締役の山本直樹氏は、「地方の自治体や企業でも気軽に芸能人や有名人を呼ぶことができることがまだまだ理解されていないとも感じています。当社は全国どこでも、予算の多寡、実施の規模に関わらず、同じひとつの案件としてバックアップしているので気軽にキャスティングを活用してほしいと考えています」と話す。
また、各ユニットは専門とするジャンルについて常に最新の市場トレンドをキャッチアップし、知識を常にアップデートしているという。これにより、最先端のキャスティングプランを提案することができる。これを可能にしているのは、平均年齢26歳で7割近くが女性だという好奇心を失わない社員たちだ。
「当社には、YouTubeやInstagram、芸能やアニメなど、それぞれの専門分野が好きでたまらない社員が集まっています。この“好きでたまらない”という好奇心こそが常に新しい情報に触れ、積極的に知ろうと行動できる原動力なのです」(山本氏)。
そのため会議で全12ユニットの事例報告がある際には、初めて知るような最先端の情報も多いと言い、それは山本氏でも同様だと話す。専門ユニットに所属する精鋭社員が手がけることで、より提案内容は最適化され、担当者自身も知識と経験を重ねていくことにつながる。この好循環がエイスリーの成長を加速させているのだと言う。
現時点では12のユニットを擁する体制を取っているが、今後、ユーザーやメディアのトレンドの変化や新たなジャンルの誕生に合わせて、それらに対応するユニットを素早く立ち上げていく。山本氏も「柔軟にユニットを改編していかなければ世の中の変化についていくことはできない。常に最先端の状態にしておくことで、クライアントさんからの信頼も得られていると考えています」と話す。
海外進出、上場も視野にさらなる成長を目指す
短期間で飛躍的に売上高を伸ばし、今年はプライベートエクイティファンドからの出資も得た。企業としてより成長していくために、上場を目指した動きを活発化させ、M&A、資本提携、業務提携などアライアンスも積極的に行っていく。
また、グローバル化が進む世の中の動きに合わせ、アジア圏でも日本と同じクオリティでのキャスティングを提供するために、各拠点で協力企業との提携も進める。今後は海外企業の日本進出、日本企業の海外進出、どちらにも対応できるキャスティング事業を展開していく考えだ。
「アジア圏における越境キャスティングはKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーを活用することが中心だったが、今後は芸能人を越境させた施策も展開できるようにお手伝いしたい」(山本氏)。
国内事業においても、一層の強化を進めている。タレントデータベースはもちろん、これまで手がけてきた案件をデータベース化したり、効果シミュレーションやキャスティングに役立つ様々なデータを提供できるようにする。これまで属人的な経験と勘をもとに行われることも多かったキャスティングを、データを活用することでレベルアップさせていく考えだ。
山本氏は、「エイスリーは“普通”のキャスティング会社ではありません」と話す。それは、従来型のキャスティング会社とは一線を画する対応力を持っているという理由だけではない。芸能やエンタメ業界への人材支援事業や、タレントやインフルエンサーのセカンドキャリア支援も行っている同社は、キャスティングを「人々の“才能”をビジネス、そして社会とつなげていくこと」だと捉えている。
「キャスティング」の概念を広げ、その価値を高め続けているからこそ、“普通”を超えた“超”総合キャスティング会社を名乗っているのだ。
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