湖池屋のリブランディングと成果 “一品が会社を変える”を体感

フラッグシップ商品へこだわり

これらはインターナルブランディングの施策になりますが、社員の意識だけが変わっても、お客さまに向けたブランディングを進めていかなければ結果はついてこないものです。そこで、次は新生・湖池屋の象徴となるような新しいフラッグシップ商品の開発が必要であると考え、的を絞った商品開発を進めることとなりました。その結果、新たな価値の中心には、国産100%の素材にこだわった製品を置くことが決まります。

これは消費者の食環境の大きな変化、数量・単価の低下という市場の停滞、他市場におけるプレミアムカテゴリーの成立、国産原料に対する要望、スナック市場における商品の定番化という現状の課題に加え、価格の許容度を調査した際に多少高くても80%を超える消費者が国産品を選ぶという結果(自社調べ)に基づいています。

フラッグシップ商品を規定する上では、いま一度「湖池屋の品質価値とは何か」を考え直しました。そこで導き出されたのが、ポテトチップスのパイオニアメーカーとして、素材や皮の剥き方、じゃがいもの使い方、揚げ方、厚さ、脂の種類、味付けの仕上げまで、まるでこだわりの料理をつくるようにポテトチップスに向き合おうという考えです。「国産じゃがいも100%使用」をはじめ、素材も製法も一切妥協なく、湖池屋のプライドをかけた理想を追求したポテトチップスをつくろうと誓いを立てました。

商品をつくることで売上を出していくという考えではなく、一品に思いを込めて、必ずお客さんに届けると。一品を探す、一品に込める、一品を伸ばす、一品を発見する、一品を広げる。“一品が湖池屋を変える”という考えを大切にし、研究開発を重ねた結果、湖池屋のプライドをすべてこの一品に捧げるという思いでつくられたのが、2017年2月に発売された「KOIKEYAPRIDE POTATO」になります。

従来のポテトチップスの工程をすべて見直すとともに、湖池屋の持っているノウハウを詰め込んだ、全社員が自信を持って商品開発、生産、販売した商品になります。様々な社内ブランディングの施策とともに、このフラッグシップとなる商品を提供したことで、ようやくコーポレートブランディングはひとつの形になったと言えます。

ただ、その後もパッケージデザインの変更や無添加商品の販売にチャレンジしています。最近では、日本が世界に誇る文化・風土の魅力を「KOIKEYA PRIDE POTATO」を通じて発信するため、日本各地の素材を使用した製品も開発しています。例えば福岡県宗像市と「焼のり醤油」、香川県の小豆島と「オリーブソルト」のフレーバーを開発するなど、さらなる成長も目指してきました。その結果、新商品や既存ブランドにも好影響をもたらし、2016年から2019年の間で売上は急速に回復していきました。

そういった目に見える成果が出てきたことで、世の中における湖池屋の見方が変わってきたという実感も伴うようになりました。B’zや読売ジャイアンツ、エドヴァルド・ムンクの大回顧展といった、今までは考えられなかった企業・団体とのコラボレーション企画も実現しました。加えて、今年の春には、「働いてみたい注目成長企業2019」(ランスタッド主催)という民間の調査で第1位にも選出されています。

コーポレートブランドの高まりによって、企業として新たな広がりが生まれ、従来からある事業にも自信を持って取り組んでいける。そんな循環が生まれたとも言え、“一品が会社を変える” というのはその通りだと、今回のコーポレートブランディングを通じて実感しました。

2017年2月に発売した「KOIKEYA PRIDE POTATO」。品質の高さが伝わるパッケージを目指した。

社員の意識を高める工夫

実は社歴が長い社員ほど変革への戸惑いがありました。そんななかで会長と社長が自ら先陣を切って旗振りをしたことが大きかったと考えています。もちろん、フラッグシップ商品の成否も非常に大きな分かれ目でした。全社員が今まで以上の努力を重ねて発売を迎え、その商品が売れたことで、「自分たちのやり方は間違っていなかった」と社員が体感できたことは非常に意味がありました。その後は社員の意識も高まっている状態なので、次々と新たなチャレンジができました。

しかし、成長の一方で湖池屋はまだ変わっていかないといけないという思いも抱いています。今後も日本を代表するポテトチップスの老舗企業として、スナック全体の価値向上に貢献していくことが湖池屋のミッションだと考えています。

「『一品』が湖池屋を変える」をキーフレーズに社内アプローチを展開した。
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