ヤマハ発動機
※本記事は宣伝会議主催のイベント「コーポレートブランディングカンファレンス 2019」(7月2日)内で行われた講演をレポートしたものです。
「社内広報の仕事のやり方を変えたい」「経営層にインターナルコミュニケーションの重要性を訴えたい」「社員に読まれるコンテンツをつくりたい」──そんな広報担当者のお悩みに答えようと、ヤマハ発動機の山下和行氏は「経営と社員、社員と社員をつなぐ仕組みづくり」と題した講演を実施した。
読むよりも“観る”ツールへ
山下氏は中国・米国などでの海外勤務などを経て「ヤマハブランドを若手へ伝承する仕事がしたい」という思いが芽生え、2013年から本社でブランディングを担当。2015年には1964年創刊の社内報のリニューアルを任された。
加えて社内広報の抜本的な改革を命じられ、課題抽出のために若手社員へのグループインタビューや全社員対象のアンケート調査を実施したところ「特に20代若手社員の情報接触が弱い」という事実が明らかになった。並行して商業雑誌の編集者へのヒアリング、雑誌編集やライターの仕事についての勉強、外部協力者との制作体制の構築などに取り組み、2016年に若手社員向けの社内報を目指し大幅なリニューアルに踏み切った。
その際に意識したのが、「大切なステークホルダーである社員のエンゲージメントを高める」ということ。そのために社員の活躍をインタビューで掘り下げる連載「ゲンバのチカラ」を立ち上げるなど、社員の承認欲求を満たし、やる気や働くモチベーションを引き出す誌面づくりにこだわった。全体のトーンもビジュアルを増やし、”読むより観る”ツールへ。原稿も700字以内を目安に文字量を減らすように変えた。
「社員の感情や情緒は非常に大事で、会社全体の雰囲気に関わる。社内に“いい雰囲気”をつくり出すのがインターナルコミュニケーションの役割であり、社員は企業のアンバサダーであるという考えに基づいている」と山下氏。誌面においても、社員の仕事から生み出される価値を捉え直し「社員の気配を感じられる、血の通ったコンテンツ」をつくることを意識している。
社内報の閲読率は84.8%
これらの抜本的な改革の結果、社員や経営者の意識が変わり、社内報やウェブグループ報を見てもらえるようになった。全社員を対象としたアンケートも実施しており、社内報の閲読率は84.8%となっている(2018年)。内容の充実度についても評価が高く、94.5%が「充実している」と回答した。
社内の制作体制も変わり、スタッフは3人から20人に増員(ただし企業ミュージアム運営業務を含む)。予算もリニューアル前の5倍まで増えている。「社内広報担当者のミッションは、経営と社員、社員と社員を“ゆるく”つなぐこと。強制力があると、それは業務になってしまう。社内に“いい雰囲気”が広がるよう現場と現場をつなぎ、仕組みづくりとアップデートを続けていくことが重要」とアドバイスした。
ヤマハ発動機
企画財務本部経営企画部
山下和行氏