紙媒体社としての個別のCDPでパーソナライゼーションの精度を高める
紙媒体社ももちろん、何もせずに手をこまねいているわけではない。日経新聞や、地方紙の上毛新聞、京都新聞などは、紙面上に専用アプリを使ってスマホをかざせば、ARの機能でグラフが動いたり、関連の動画が再生されるサービスを始めたりしており、紙面にとどまらない読者との双方向コミュニケーションを始めている。
また各新聞社や雑誌社とも、電子版と呼ばれるネットでの記事配信事業に取り組んでおり、デジタルトランスフォーメーションも視野に入れているが、紙媒体がもともと持っている読者の紙への依存リテラシー(ニュースや記事は紙をめくることによって読むものであり、デジタルデバイスで読むものではないという一種の深層心理上の固定概念)を凌駕するビジネスモデルには至っていない。
紙で行っていた編集をそのままデジタルに置き換えるというだけでは読者のインサイトに響くものではないという仮説も想定し、エマージング技術を活用した、新たな情報提供スタイルを模索し、いくつかの既存モデルを破壊するビジネスモデルのPoCを繰り返していくことからしかイノベーションは生まれないのではないだろうか。
では、紙媒体はどうしたらよいのか。今回、申し上げたい提言は、現状のビジネスモデルをそのままデジタルトランスフォーメーションすればよいのではなく、よりランダム化する消費者の情報購買に対して、これまで以上にパーソナライズドされたサービスを提供すべきではないかということである。
“紙の印刷”を前提としている限り、パーソナライズは難しいという声をよく耳にするが、そのことを前提にしたとしても、デジタル化部分でのパーソナライゼーションは可能だと思う。そのために、まずはマーケティングでは当たり前になっている消費者の行動データ収集にあたる、読書スタイルデータ(コンテンツの好み、読む頻度、その他の傾向)を各社ごとに収集し、紙媒体社としての個別のCDP(Customer Data Platform)を構築することから始めたらどうだろうか。