第1部では、サインコサイン代表取締役CEO 加来幸樹氏と産業編集センター はたらくよろこび研究所 企画制作部 部長の相山大輔氏が、基調対談を行った。
今回のテーマは「伝えるから、伝わるへ 企業のあり方が変わる今、コミュニケーションも変わる」。
加来氏は同社を立ち上げる前から、クリエイティブディレクターとして多くの企業のブランディングを手がけてきた。
その経験を踏まえ、近年の企業のあり方について「コモディティ化、ダイバーシティ化が進み、ブランディングの正解や絶対のルールはなくなった。ただロジックを提示するだけでは社員を会社が目指すゴールに向かわせることはできない。これからは“理念の共感” が必要だ」と話した。
また、共感を生み出すインターナルコミュニケーションの特徴として❶インプットだけでなくアウトプットする場がある ❷オンラインと共存しつつ、オフラインでのコミュニケーションが充実 ❸理念をストーリーを持たせ紹介する—の3つを挙げた。
企業の社内報の立案や制作に携わってきた相山氏は「社内向けと社外向けに完全に分けて考えることもないと思う。企業も透明性のある開示が求められる時代。シームレスな対応も必要になってくるのでは」と話した。
会社の大きな変革を転機に
第2部からは企業の事例を紹介。最初に登壇したのは三井住友DSアセットマネジメント コミュニケーション推進部 副部長の丸山勝己氏。同社は2019年4 月に大和住銀投信投資顧問と経営統合し、社名を変更した。
2018年12月には統合を機に、経営理念を両社の声を反映した内容に改定。行動規範実践のワークショップなど、社員が「自分ごと化」できる機会を設けた。
社内表彰や、人事評価に理念・行動規範の実践度を加えるなど、新しい施策も打ち出している。丸山氏は、「統合前から理念が会社の中で形骸化してしまっている状態を問題視していました。この改定はスタートライン。継続していくことが重要」と話した。
第3部ではブリヂストン 広報部広報第3課長の垂水伸浩氏が登壇。国内だけでも、50拠点約3万人のグループ従業員を擁する同社。1969年からグループ報『Arrow』を発行しているが、昨今は一方通行になりがちな情報発信が課題だった。
そこで2015年にウェブ版をメインに移行。2017年からはスマホにも対応し、アクセスしやすい環境を整えた。ウェブ版最大の利点は「社員のリアクションが見られること」と「即時性が高いこと」。いいね機能やコメント欄をつくり、情報発信の媒体としてだけではなく、コミュニケーションの場として確立することを目指している。
「本社発信ではあるが、国内のグループ従業員が親近感をもって受け取ることができる情報発信を意識している」と垂水氏。今後もウェブ版を活用し、会社の方向性や活動のグループ内認知、コミュニケーションの活性化に力を入れていく。
第4部で登壇したのは、オイシックス・ラ・大地 統合マーケティング本部 ソーシャルコミュニケーション部部長兼広報室室長の大熊拓夢氏。同社は2017年から2018年にかけてオイシックスと大地を守る会、らでぃっしゅぼーやが合併し発足。
それに伴い、企業理念も改定し、三社三様の風土や価値観、理念のすり合わせが求められた。「インターナルコミュニケーションの重要性を改めて実感した」と大熊氏。
合併前には3社合同の全社キャンプを実施。また「かけこみ寺」という窓口を設置し、合併に伴う社員の小さな不安や悩みに向き合った。社内が一体になるための下地づくりを確実に行ったことで、円滑な社内コミュニケーションを促進できたという。「会社の変化は不安なことだが、企業理念をしっかり打ち出し、順を追って社内への認知・浸透を図ることで、社員を同じ方向に向かわせることができる絶好の機会になる」と話した。
終盤には、「メディア使いのプロが語る インターナルコミュニケーション活性化のためのコツ」と題して、ソニーPCL クリエイティブ部門の山内博文氏(チーフプロデューサー)と浦﨑政也氏(ビジネスプロモーション部)、産業編集センターの石原良平氏がトークセッションを実施。今回の講演でキーとなる内容を振り返りつつ、会を総括した。
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