日本ABC協会が9月5日、会員限定の特別フォーラムを都内で開いた。日本ABC協会では現在の環境における雑誌のブランド力を評価しようと、2016年発行の雑誌レポートから、従来の販売部数に加え、WebやSNSなどの数値も「ブランド指標」として発表している。今回の特別フォーラムは、これらの取り組みをはじめとする、雑誌メディアの価値を再考するための機会として企画されたもの。
フォーラムは3部構成で、登壇者には「dマガジン」をはじめNTTドコモのデジタルコンテンツを所管する秋元真太郎・書籍ビジネス担当課長や、KADOKAWAや小学館など大手出版社のデジタルメディア担当者が名を連ねた。
まず、NTTドコモの秋元氏がdマガジンの現状を説明。アクティブユーザ数は2014年のサービス開始以降増え続け、いまでは月に約100万人、24億PVを記録しているという。さらに、昨年3月スタートのdマガジンへの広告掲載も53社156誌(2019年4月時点)に上っていると話す。
また、同社は4月に「dマガジンによるリーチ拡大調査」を実施。dマガジンユーザ約6万人強(有効回答数は4280)に、「1カ月以内に紙の雑誌を読んだ、あるいは購入したか」などを質問した結果、紙のみの購読者とdマガジン併用者の総計に対し、その約6割がdマガジンでのみ雑誌を閲覧していたという。
「約16倍強のリーチ拡大をdマガジンは達成した」と秋元氏は結論付け、「日本の雑誌ブランドの価値を生かし、電子広告市場を広告主・出版社・広告代理店とともに電子雑誌広告市場を盛り上げていきたい」と意気込みを語った。
さらに、協会所属の佐藤朋裕・東洋経済新報社ビジネスプロモーション局部長をモデレータに、KADOKAWAマーケティングソリューション推進部の川村賢也氏、集英社 広告部の大西耕太郎氏、小学館 広告局の小林由佳氏の3者による、雑誌ブランドを生かしたデジタル広告の手法についてのパネルディスカッションが行われた。
佐藤氏は、電通が発表した「2018年日本の広告費」の結果を紹介。「日本の雑誌広告は前年比91.0%と縮小傾向(広告費全体では2.2%増)なる一方、マスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)由来のデジタル広告費においては、雑誌が他の媒体を抑えトップ(337億円)だったといい、「雑誌はデジタルと相性がよい」と持論を述べた。
それを踏まえ、小林氏が「出版界では雑誌の認知獲得のため、タッチポイントを拡大する施策が尽きている状況ではないか。書店に営業して雑誌を陳列してもらうのと同じ感覚でオンライン、オフライン問わず新しい媒体・方法が出てきたら、どんどん活用していく必要がある」と話す。
川村氏も、「タッチポイントはデジタルだけでは限りがあるので、リアルに客との接点をつくる場所としてイベントなどと合わせてやっていくべき」とコメント。最後に、小林氏が、「紙の希少性が上がるにつれて、雑誌広告の価値は上がってきていると感じる。ただし、紙を生かすも殺すもデジタル次第だろう」と締めくくった。