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正しい悩み方を知ることの重要性
面白い企画、いいコピーを書く人は才能があって自然にアイデアがバンバン出てくる人ばかりだと思っていませんか。アイデアをひねり出すのはとても苦しく、出口の見えない作業で、自分には無理だと感じてしまう人もいるかもしれません。そんな人におすすめの本が『面白くならない企画はひとつもない』(高崎卓馬 著)です。
ただやみくもにアイデアを出そうとするのではなく、正しい悩み方を知ることで、誰でも面白い企画にたどり着くことができます。本書ではいくつもの手法が紹介されていますが、ここでは一例を紹介します。
まず自分でコピーをひとつ考えてみます。そして、その長所と短所を思いつく限り書き出します。そして長所を伝えるべきか、短所をカバーすることはできないか、と考えはじめます。そして、最初のコピーの短所を打ち消すコピーを考えます。あとは、これだ! というコピーにたどり着くまでこの作業を繰り返すのです。
著者も若いころはこのループから抜けられず、苦しい思いをしたそうです。しかし、ある瞬間に、今まで出してきたアイデアを一気に飛び越えるものが生まれる。それは何物にも代えがたい快感をともなうそうです。脳は筋肉のように鍛えることができます。最初はこの作業が苦しいかもしれませんが、確実にいいコピーに近づいていきますし、慣れてくるとスピードが速くなってきます。ぜひあきらめずトライしてみてください。
とにかく「視点」を高くすること
本書はCM企画の全体の話をしているので、コピー以外の様々な要素について言及しています。しかしそれはコピーライティングにおいてもよいヒントになるはずです。「視点」の話もその一つです。
著者の後輩が、企画が面白くならないと相談に来ます。携帯電話のCMで「通話料が定額になる」ということをアピールする内容です。どうも面白くない後輩の企画を目の前に著者がアドバイスするのが「視点を高く持つ」ことです。
通話料定額をとにかく打ち出すのではなく、その先のことを考えてみてはどうかと後輩に伝えます。通話料を気にせず話せるということは、たくさん会話ができるということ。家族の会話が増えるということ。つまり新しい家族の関係性が生まれる可能性があるということ。こう考えていくと、「通話料が定額」というサービスの特徴から、世の中への効果まで広がっていきます。結果的に後輩は「通話料定額で家族のカタチがいいほうへ向かう」という新たなアイデアを得ます。
「伝えたいこと」をそのままに企画をするのではなく、問題を大きく捉え直すと企画の鉱脈がこつ然と現れるかもしれません。これはコピーを考えるうえでも一つのヒントになるのではないでしょうか。
本書にはこのような企画を考えるうえでのヒントがたくさん詰まっています。アイデアに詰まったらぜひ読んでみてください。
<紹介した書籍>
『面白くならない企画はひとつもない 高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック』
著:高崎卓馬
価格:1800円+税
ISBN:978-4-88335-457-3