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プラットフォームを所有し始めた広告主 進むインハウス化と広告会社の役割
本連載では、パーソナライゼーションというテーマをもとに昨今のメディア環境の変化を読み解いてきた。5回目となる今回は、メディア環境の変化が広告会社に与える影響について考察していきたい。著者自身20年以上、広告会社でメディアやマーケティング領域の業務を担当し、その後事業会社のCMOという立場で広告主としてもメディアに接してきた。そういう意味では、今回のテーマは自身が感じている「広告会社こうあるべき」という生々しい主観が一部入ってしまうことをご容赦願いたい。
逆に言えば、広告会社の酸いも甘いも理解しているがゆえの示唆にできればと考えている。メディア環境が大きく変化する中で、広告主企業の広告戦略のスタンスにも変化が生じている。従来、広告戦略は広告会社を活用し、基本的なコミュニケーションプランニングや広告のエグゼキューションを代行させていた。ところが、近年はGAFAなどのプラットフォーマーが消費者の行動データを豊富に蓄積してきたため、当該プラットフォーマーが提供する広告配信サービスを広告主が直接、利用するケースが増加している。
また一部の広告主においては、デジタルプラットフォーム自体をビジネスの中核に据えてビジネス展開しているケースもある。そのため自社で消費者や取引先と直接つながったプラットフォームを所有しているケースも出てきた。そうなってくると外部の広告会社や、さらにはプラットフォーマーを活用せずとも、自社のプラットフォームやオーディエンスデータを活用して独自の広告活動を行うことができるようになる。
例えば、パナソニックは自社のデジタルプラットフォームで顧客と直接コミュニケーションするためのデータ整備やクラウドサービス開発を進行中である。また、プロクター・アンド・ギャンブルは米国ではインハウス方式でメディアプランニング&バイイングのプラットフォームを構築し、直接メディアと取引できる体制を整えつつある。
広告会社やメディア企業側は、これらクライアント・オーガニックな広告モデルと従来の伝統的なメディアビジネスモデルをどう組み合わせ、どうシナジャイズするのかを意識しないと、広告主の活動とコンペティティブな構造になってしまう可能性がある。
プロクター・アンド・ギャンブルのチーフ・ブランド・オフィサーであるマーク・プリッチャード氏は2016年にアドエイジが主催したカンファレンスで、エージェンシーを前に次のように述べた。
「みなさんが抱える複雑性が、私たちの問題になることがあってはなりません。そこで、私たちとしては、みなさんがその複雑性を解消してくれることを希望します」。
3年前のこのメッセージを現在、日本の広告会社はどのように受け止めるのだろうか。以下に広告会社を取り巻く環境変化を取りまとめつつ、パーソナライゼーションというキーワードを念頭に置き、近未来の広告会社がとるべき変革の方向性を指摘してみたい。