評価基準を知れば社会の見方を理解できる
—エントリーすること自体で得られるメリットも多くあると聞きます。
こういったアワードを目指すことにより、本来的な業務の指針になり得ることは、より多くの方に知っていただきたいですね。すなわち、自分たちの業務を「こういうストーリーで語ることができれば、審査員も納得・共感してくれるよね」という理想像を事前に描いておくことは、正しい戦略策定やターゲット設定、KPI設定などに役立ちます。
この理想のストーリーを完成させるために足りないピースは何なのかを常に考え、準備していくことができれば、それがクライアントにとっても最高のリターンを生み出すことになるわけです。
アワードの評価基準を知ることが、社会の視点を知り、理想の業務を完成させる、ひいてはクライアント満足度を高めることになると気付けば、日常業務とアワードエントリーが表裏一体に感じられ、エントリーへのハードルも下がると思います。
これはアワードにエントリーしたいけど、エントリー作業に慣れておらず、ここに時間をかけるのはいかがなものか、と考えてしまう方々の意識変化につながるものではないかと思います。
アワードへの参加で日ごろの活動の自己採点を
—エントリーを検討されている方々に一言ください。
今後、本記事では昨年グランプリを受賞された大和ハウス工業の「『名もなき家事撲滅へ』~大和ハウス『家事シェアハウス』」の担当者から、受賞によるクライアントベネフィットやPRパーソン側のメリットなどもお話いただけると思います。
アワードにエントリーすることは、自分たちのやってきたことの棚卸しでもあり、またそれを客観的に自己採点する良い機会でもあります。クライアントとの目線合わせや、自身のプランニングのアップデートのためにも一度まとめて俯瞰して見るのは重要かと思います。
また以降の記事では審査員の目線はどう推移するのか、すなわちエントリーシートの正しい書き方という視点で昨年の審査員経験者の方に解説していただく予定です。これらをベースに、皆さんのエントリーへの精神的ハードルを取り除き、多くのエントリーに審査会で出会えることを楽しみにしています。
井口理(いのくち・ただし)
電通パブリックリレーションズ 執行役員/チーフPRプランナー
PRSJ認定PRプランナー
1990年電通PRセンター(現・電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。企業のコーポレート・コミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手がける。カンヌライオンズ2012など各種海外アワード審査員のほか、2018年よりヤングカンヌコンペティション国内代表選考審査員長、2019年PRSJアワードグランプリ審査委員長。著書に『戦略PRの本質』(朝日新聞出版)、『成功17事例で学ぶ 自治体PR戦略』(時事通信社:共著)、『戦略広報-パブリックリレーションズ実務事典』(電通:共著)。