『ニコラ』編集部とつくる「一生のファン」~熱量の高いコミュニティはどのように生まれるのか

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生活者の周りに情報が溢れる中、企業は、商品への興味を促すためコミュニティ別の深いコミュニケーションを重視しつつある。一方、雑誌を起点に情報受容度の高いファンを生み出している雑誌編集部では、デジタルやイベントによって交流を行い、読者コミュニティの熱量を高めている。雑誌がどのようにコミュニティをつくり、広告主はいかに雑誌とコラボしているのか。『雑誌広告2.0』(宣伝会議刊行)の発刊を記念し、本記事では『ニコラ』編集部の取り組みを紹介する。

ニコラモデルに憧れて雑誌を熟読

1997年に創刊した新潮社の『ニコラ』のターゲットは、女子中学生を中心に、小学校高学年から高校1年生くらいまでのローティーン。中学生向け競合誌が休刊する中、2017年に女性ティーンズ誌の販売部数No.1となり読者の支持を集めている。

彼女たちが『ニコラ』を購読する目的は、「専属モデル『ニコ㋲』が好きだからという理由が圧倒的に多い」と編集長の小島知夏氏は話す。毎年、オーディションで選ばれる「ニコ㋲」は、これまで新垣結衣さんや川口春奈さんをはじめ、人気女優やタレントを多数輩出してきた。読者にとって「ニコ㋲」は憧れであり、同世代として共感しやすい存在だ。

「読者が知りたいのは、ニコ㋲が何に興味・関心を持っているかです。同じファッションの企画でも『ニコ㋲が着たい』『ニコ㋲の私服』といったものが読者には受け入れられ、店頭でも商品の売り上げが伸びたという話をいただきます」と小島編集長。

「ニコ㋲」の関心ごとを企画に活かすため、編集部では毎月ニコ㋲にアンケートをとる。その量は、モデルひとり当たりA4サイズ40枚近くにのぼる。「記述式もあれば、コーディネートや髪型の絵を描いてもらうアンケートもあり、ニコ㋲は一生懸命協力してくれています」(小島氏)。

誌面の情報量は多く、ボロボロになるまで熟読する読者もいる。中学生の携帯保有率は6~7割、読者にとって雑誌は重要な情報源だ。

「『ニコラ』の定価は500円ですが、一般的な中学生のお小遣いが月1500円くらい。決して安くはありません。隅々まで誌面を読んでいるのが、手紙や電話の問い合わせでもわかります。読者の期待に応えられるよう、1冊で長く楽しめる、読み応えのある誌面づくりを意識しています」と小島氏は話す。

読者から届く、とじ込みアンケートの回答は月3000通。「自分の意見を聞いてもらいたい」と考える読者がぎっちりと想いを書き込む。アンケートの結果は誌面に活かされ、ファンを逃さない。「クリスマスに関する企画は、12月発売号で扱うことが通例でした。ところが、アンケートで11月には何をもらうか考えていることがわかり、11月発売号でクリスマスに欲しいもの特集を実施したところ、大きな反響がありました」(小島氏)。

次ページ 「読者が集まる体験イベント」へ続く

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