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パーソナライゼーション時代にフィットするマーケティング理論とは
本コラムでは「パーソナライゼーション時代―メディア企業のマーケティング戦略」をテーマに、論を重ねてきた。
このテーマは言い換えれば、従来の「最大公約数」的な理論に依拠したメディアの在り方をどのようにパーソナライゼーションという流れにフィットさせるか、を論じるものであるのであり、それを論じる上ではマーケティング活動の理論的根拠となっている考え方から見直すことが必要となる。なぜなら「最大公約数」的な理論は、広告メディアの側面から見ても、メディア企業のビジネスの根源になる考えとなっていたからだ。
メディア企業にパーソナライゼーションが求められているように、広告主企業にも消費者に対するパーソナライゼーションが求められている。広告主企業のマーケティング戦略が変われば、おのずとメディアに求められる役割も変わる。それゆえ、今回は広告主側のマーケティング活動の変化に着眼して論を進めていきたいと思う。
企業のマーケティング活動において、メディアが必要とされる理論的な根拠としては、「AIDMA」や「AISAS」に代表される購買に至る道筋として、消費者の購買に向けてのエンゲージメントを深める役割を担うということだろう。その前提に立ち、これまで広告主や広告会社がメディアターゲットを決めたり、認知率とGRPの相関などを分析したりして、メディアがマーケティング活動の中で役割を果たすためのルールを整えてきた。
これらの考えの前提となるのは、メディアターゲットはセグメントさえきちんと行えば、各セグメントに属する消費者はおおむね同様の行動をするので、同じメッセージを投げかけても同様の効果(反応)が期待できるという「最大公約数」的な論理である。大量生産・大量消費時代に培われたマーケティング戦略の基本的な考え方が、消費者の価値観や行動の多様化で多少はセグメンテーションすべきという流れになったものの、「ターゲットを最大公約数で考える」という理屈は変わっていない。