二つの機能を持つ「JUKU」
「JUKU」があるのは、東京・原宿のキャットストリートに近い商業施設「SIX HARAJUKU TERRACE」の一角。ガラス張りの空間の真ん中には大きなテーブルが置かれ、奥にはキッチンカウンターがある。周囲にはセレクトショップ、カフェが並んでいることもあり、「ここをカフェと勘違いする方もいますね」と、永井聡さん。
JUKUには、二つの機能がある。一つは、永井さんを中心とするクリエイティブブティックの活動拠点としての機能。もう一つは、AOI Pro.社員を中心に社内外のクリエイターが集まり、企画作業や打ち合わせなどができるコミュニティスペースとしての機能だ。ここを立ち上げた背景には、CMディレクターをはじめ、様々なフィールドで活動するクリエイターのマネジメントを行う同社の組織「CluB_A」がある。
「15年前、僕が葵プロモーション(現AOI Pro.)から独立した際に、僕のマネジメントをする組織として会社が立ち上げたのがCluB_Aです。当初は僕とマネージャーの2人しかいませんでした。その後、自然とAOI Pro.の企画演出部を卒業するディレクターはCluB_Aに入る筋道ができて、今では17人在籍しています」。
優秀なディレクターが増えるごとに組織は活性化し、受ける仕事は増えていった。CluB_Aの成熟に伴い、永井さんは「ここは若い人に任せて、新しい組織を立ち上げよう」と考えるようになったという。
「実はCluB_Aを始めた頃から、写真家や脚本家、デザイナーなどが参加する総合的なチームをつくり、CMに限らずドラマや映画など大きな仕事ができるようにしたいと考えていました。その構想をいよいよ実現しようと、今年4月にAOI Pro.社長の潮田一に話したところ、“社員が外部のクリエイターやスタッフともコミュニケーションが取れるワークスペースをつくりたいと思っている”と聞き、タイミングが一致したこともあって、クリエイティブブティックとコミュニティスペースを一緒につくることにしたんです」。
「JUKU」という名前には、他ジャンルの人々が集まり勉強できる場としての「塾」。ここを通してクリエイターとして「成熟」してもらいたいという願い。さらには、いつでも来られるフリーなワークスペース「宿」という意味が込められている。
クリエイターが集まるサロン
コミュニティスペース「JUKU」のイメージは、“クリエイターが集まるサロン”。永井さんがこだわったのは、“集まりやすさ”と“居心地の良さ”だ。場所は気楽に立ち寄れる原宿にし、2階ではなく路面の空間を選んだ。さらに外観や内装はオフィスらしさを排除し、カフェのような空間をイメージした。永井さんはここを単なる作業スペースではなく、人と人がつながる場にしたいと考えている。
「例えば他社のプロデューサーの方と広告賞のパーティなど特別な場で知り合うことはありますが、そうではなく普段からいろいろな人たちが接点を持つことができる場として、JUKUを機能させていきたいと思っています」。
JUKUにふらりと訪れてみたら、面白そうなクリエイターと出会い、それをきっかけにして会社や部署の垣根を越えて仕事をする—永井さんが目指すのはそんな場所だ。
新しい仕事の進め方を発信する
永井さんはJUKUを通じて、従来の仕事の進め方を変化させていくことも目論んでいる。
「将来JUKUのメンバーに脚本家やカメラマンなどさまざまなスタッフが揃えば、例えばバジェットの少ない映像制作はここで完結できるかもしれない。これまでは依頼を受ける形での仕事が中心でしたが、今後は自分たちが動いて、企画したものを提案したり、形にしていける体制も考えていきたい」。
また、こういう場を設けることで、業界内の“壁”を崩していきたいとも話す。
「CM業界をより活性化させていくためには、会社の壁を超えて協力したり、知見を共有していくことも、今後必要になってくる。そういう場としても、ここを機能させていきたいですね」。
これらの構想を実現するためにも、まずはクリエイターにJUKUの存在を知ってもらい、実際に訪れてもらうことが不可欠だ。
「まずはカフェに立ち寄るような気持ちで、足を運んでいただけたら、と思っています。僕は仕事をするうえでは出会うこと、知り合うことが何よりも大事だと思っているので、JUKUによって横のつながりができるとうれしい。ここでいろいろな話をして、お互いに高めあって、一緒にビッグジョブを生み出していけたらと思っています」。
<永井聡さん演出作品>
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JUKU
https://www.aoi-pro.com/juku/