広告がもっと楽しまれ、愛されるものになるアイデアに300以上の応募
10月8日、「Yahoo! JAPAN 広告商品アイデアアワード」のグランプリをはじめとする各賞の受賞者・受賞作品が発表となる授賞式が開催された。
「Yahoo! JAPAN 広告商品アイデアアワード」は、広告が人々からもっと楽しまれ、愛される存在であり続けるためのイノベーションを起こすような“広告フォーマット”のアイデアを公募するアワードでYahoo! JAPANと宣伝会議で企画・運営している。
2019年7月1日から8月5日までに集まったアイデアは300を越え、その中から審査を通過した10作品をファイナリストとして選出。9月11日には全10組のファイナリストが審査員を前に企画のプレゼンテーションを行う場も設けられた。その後、応募者のプレゼンテーション、その場での審査員との質疑応答も踏まえ、審査員による協議が行われ、10月8日の各賞の発表となった。
授賞式で発表されたのは、グランプリ(賞金100万円)、準グランプリ(賞金50万円)、特別賞(賞金30万円)の3賞の受賞作品だ。
グランプリを受賞した企画は、本田真也さんの「アドフォン」。ユーザーのデータを活用した広告が表示される代わりに、携帯料金が月額0円のスマートフォンを提供するというもの。
ユーザーを知るためのデータの宝庫であり、誰よりもユーザーのことを知っているスマートフォンに着目し、ユーザーのメリットと広告主のメリットをつなぐ“愛される”広告のアイデアである点が評価された。また今後の具体化を考えた際にも、携帯キャリア事業も手掛けるソフトバンクのグループに属するからこそ、できることもあるのではないかと期待が広がるアイデアであったことから、グランプリに選出された。
準グランプリを受賞した企画は、佐藤佳文さん、各務将成さんの「年齢認証いいえ称賛広告」。
ネット上の年齢認証で「いいえ」を押した、素直な子供を褒め称えるサイトをつくるアイデアだ。
仕組み自体のユニークさ、さらには実現可能性の高さが審査員の評価を得た。また年齢の確認だけでなくネット上には、「はい」「いいえ」のいずれかをユーザーに選んでもらう場面は多くあることから、他のシチュエーションでも応用展開できそうな汎用性の高さも評価を得たポイントだった。審査員の間でも、この仕組みの上に乗るクリエイティブのアイデアが多数出るなど、可能性を感じさせるアイデアであったことから選出された。
特別賞を受賞したのは、森内大樹さんの「Ad BATTLE~広告対戦~」。Web媒体上で、異なるクライアントによる広告が対戦カードのように提示され、消費者が広告の内容を評価し勝敗を決める。広告自体をコンテンツとするアイデアだ。シンプルな仕掛けだが、「面白いクリエイティブの広告が勝つ」というアイデアは、広告や広告業界の魅力を可視化することにもつながり、本アワードの趣旨にも沿っているとの評価を得て、特別賞に選出された。
授賞式では、審査員全員が登場して、審査の講評を語るミニセッションも開催。今回のアワードは日本を代表するクリエイターが審査にあたっている。審査員は以下の6名。
■「Yahoo! JAPAN 広告商品アイデアアワード」審査員
・明石ガクト氏(ワンメディア 代表取締役CEO)
・鹿毛康司氏(エステー 執行役 クリエイティブディレクター)
・小助川雅人氏(資生堂 クリエイティブ本部 クリエイティブディレクター)
・嶋浩一郎氏(博報堂 執行役員/博報堂ケトル クリエイティブディレクター)
・砥川直大氏(The Breakthrough Company GO クリエイティブディレクター)
・中村洋基氏(ヤフー メディアカンパニー マーケティングソリューションズ統括本部 エグゼクティブ クリエイティブディレクター/PARTY Creative Director, Founder)
セッション冒頭で6名の審査員から、今回のアワードの感想が語られた。審査員は全員が全応募作品を見て、審査にあたっている。初めて開催されるアワードということもあり、その審査の基軸の難しさも語られた。
各審査員が語った審査の感想は以下の通り。
「仕事の経験が長くなると、常識にとらわれてなかなか新しいアイデアを思いついても形にしようとしなくなってしまうところがある。グランプリを受賞した『アドフォン』のような企画を、思いついたとしても、そういうアイデアを口に出さなくなってしまうのではないかと思う。そういう点からも、今回のアワードは審査をしていても楽しかった」(明石ガクト氏)
「広告がいま好かれていないのだとすれば出方、フレームワーク、コンテンツなどに問題があるのだと思うけど、準グランプリの『年齢認証いいえ称賛広告』は、“出方”として愛される広告になっている点を評価した。あったかい気持ちにさせる広告のアイデアだったと思う」(鹿毛康司氏)
「テーマ自体が非常に難しいアワードでありながら、良いアイデアが多く集まったと思う。私も、常に広告が今よりもっと好かれるためにどうしたらよいかを考えているので、アワードを通じて志を同じくする若い仲間が増えることは素晴らしいことだと思った」(小助川雅人氏)
「賞を受賞した人も偉いけれど、このアワードを始めたYahoo! JAPANも偉い。ネット広告は広告の効率化という点では貢献が大きいが、人々の生活を豊かにするような広告の文化は、まだつくられていない。その文化を0からつくろうとしているYahoo! JAPANの姿勢がとてもよいと思った」(嶋浩一郎氏)
「『アドフォン』は実現できるか分からないけれども夢があって、『年齢認証』は出現のタイミングにユニークさがあって、『Ad Battle』は今ある広告の延長にあるけれども、広告をもっと魅力的なものにできる可能性があるという意味で、結果的に広告の違った側面を評価したバランスのとれた受賞になったと思う」(砥川直大氏)
「ネット広告の世界は運用型広告の比率が高まっている。でも、これは一時的なものだと思っているし、きっとクリエイティブを重視する広告への揺り戻しが起きるのではないか。今回のアワードで応募のあったアイデアは、ネット広告の新しい世界観をつくるものになると思う」(中村洋基氏)
今回、受賞したグランプリ作品の他、ファイナリストに残った優れた作品については、今後Yahoo! JAPANが新広告商品として採用することも検討している。