顧客の“痛点”の発見が、機能だけではないブランド価値づくりにつながる—イデアインターナショナル、日本コカ・コーラ、Peachの戦略

移動した先での体験に、エアラインが提供する本質的な価値がある

イデアインターナショナルは調理家電も扱うため、大手家電メーカーと競合する商品もある。家電メーカーは高い機能性を訴求するので異なる競争軸が必要。そこで、ホットプレートであれば「ホームパーティーの楽しさや知人と共有したくなるレシピの提案」を、圧力調理器具であれば、時短調理を可能にするという機能面の訴求だけでなく、「野菜をたくさん摂取できる食生活」など、その商品があることで実現する新たなライフスタイルを訴求するようにしているのだという。

この課題意識に対して、日本コカ・コーラの河合氏も「社内でコミュニケーションを開発する際にも、無意識に商品機能の話に集中しがち。しかし、飲料でも『で、それでどうなるの?』『お客さまに、どのような価値が提供できるの?』ということが大事なので、星野さんの話にはとても共感する」と話した。

航空会社でありながら社名に「航空」「エアライン」という言葉を用いていないPeachも、まさに商品スペックの先にあるお客さまにとっての価値を重視してきた会社であり、星野氏の話に対して野村氏は大きく共感を示していた。

さらに野村氏は今年、開催した自社のファンミーティングで、Peachの搭乗回数が多いヘビーユーザーの一人に活用の理由を聞いたところ「単身赴任中で、月に一度の飛行機代は会社が出してくれるが、本当は毎週家族に会いたいからPeachを利用している」という声が挙がったことを紹介。「A地点からB地点まで〇〇円です、では伝わらない。顧客の『こんな使い方をしている』の声をヒントに『どう暮らしが変わっていくか』を訴えていかなければいけない」(野村氏)と、自社の問題意識と重ね合わせて説明した。

Peach コミュニケーション本部 カスタマーエクスペリエンス部長 野村昭良氏。野村氏からは社内で配布したという冊子「SHARE HAPPINESS! STORIES」が参加者に配られた。手頃な航空運賃だからこそ実現する、移動した先に広がるお客さまの喜びの体験をまとめたもので、参加者から大きな共感を得ていた。

広告メッセージが届きづらくなる時代のコミュニケーション戦略

清涼飲料販売量、炭酸飲料、スポーツ飲料の販売額、自動販売機設置台数で日本国内ナンバーワン※を誇る日本コカ・コーラ社(※日本コカ・コーラ調べ)。日本国内で展開するブランド数は50以上、製品数は800種類以上にも上るが、ブランドごとに異なるさまざまなメッセージ、製品ごとの多様なキャンペーン情報を伝達する手段について昨今、課題意識を高めていると河合氏は話す。

「消費者がテレビCMを視聴しにくくなっており、デジタルの世界でもアドブロックアプリが登場している今、どのようにメッセージを届けていくか。従来のように、コンテンツの視聴や体験を遮って情報を伝えるのではなく、我々のメッセージそのものを魅力的なコンテンツ・瞬間・メディアとして伝えていくべきと考えている」と語った。

そこで日本コカ・コーラ では1年を通じて、消費者が置かれる環境やその時々のマインドを分析。それぞれのブランドにおいて、消費者の気持ちに最も寄り添えるモーメントを見つけ出すようにしているという。「こうした瞬間にコミュニケーションできれば、私たちのメッセージに対してお客さまが反応してくださる可能性が高い。たとえば、エナジードリンクであれば昼間に『もうひと頑張りしなくちゃ』と考えている瞬間にアプローチするのが有効だし、その瞬間を捉えられるようなメディア、コミュニケーション戦略を企画している」(河合氏)。

日本コカ・コーラ マーケティング本部 IMC バイスプレジデント 河合英栄氏。河合氏が着ているのは、「コカ・コーラ」と「A BATHING APE」のコラボTシャツ。他のブランドとコラボレーションできるのも、強いブランド力を持った「コカ・コーラ」だからこそ。

次ページ 「他社にある価値をプラスするのではなく、顧客の“痛点”を洗い出す」へ続く

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