テクノロジーだけでなく、地球や社会全体に対する姿勢も大きなテーマに
今回、筆者が参加するのは2回目となる「Web Summit」について、まず簡単に解説しておきたいと思う。すでに各種メディアでも少なからず取り上げられているので、その存在については知っている読者も多いのではないだろうか。
「Web Summit」は、2010年からスタートした欧州最大規模のイノベーションカンファレンス。会場はポルトガルのリスボンで、世界中のCXO、スタートアップ創業者、投資家、ジャーナリストなど8万人以上が参加するイベントだ。近年、日本人の参加者も増えており、日本における関心の高まりを感じている。
さて、この「Web Summit」だが、その大きな特徴は米系のテック系カンファレンスとは一線を画したテーマ設計にあると筆者は考えている。AIや自動運転、ロボット、5G、デジタルマーケティング、FinTechといったテクノロジーやスタートアップエコノミーをテーマにした話題が多く取り上げられている点は、他の北米系のカンファレンスと大きく変わらない。
しかし「Web Summit」では、テック系のテーマに加えて、「地球環境」「サスティナビリティ」「プライバシー」、「人間中心」など、デジタルによる巨大なエコシステムに対するアンチテーゼ、さらにそれらとの付き合い方についての話題が多く多く取り上げられている。多くのセッションにおいて「地球市民として企業や企業家、政府は何をするべきなのか?」という大きなテーマに向き合っている点が印象的だった。
基調講演には、エドワード・スノーデン氏が登場
今回、最も驚いたのが、初日を飾る基調講演のスピーカーに登場したのがエドワード・スノーデン氏だったことだ。ご存知の通り、スノーデン氏は米国NSAによる国民監視システム(PRISM)の存在を告発した人物。現在はロシアに亡命しているため、遠隔での参加となり、会場の巨大なスクリーンに映し出される形で登場した。そして、モデレーターはピューリッツアー賞受賞のジャーナリストであるジェームズ・ポール氏が務めた。「Web Summit」初日にして濃厚なインタビューになった。
スノーデン氏はテクノロジーについて、もっともゾッとする特徴として、情報収集と監視について挙げた。警察やスパイが過去に行っていた標的型の監視はターゲット(標的)が決まっていた。しかし、そうした標的型監視はなくなり、あらゆる場所でまったく普通のあらゆる人々を監視できるようになり、より多くの情報が収集されている現在の状態を“永久記録の作成”と呼び、民主主義の問題であるということを訴えていた。