欧州からトレンドを探る! 「Web Summit2019」レポート(森 直樹)

データ保護の問題は収集にある、GDPRは解決策ではない

ジェームズ氏の「GDPRは万能薬になるか?」との問いに対して、スノーデン氏は「GDPRは解決策ではない」と回答。データの“保護”は問題ではなく、“収集”に問題がある。スノーデン氏は「データを保護する規制は収集が適切だったという前提に立っている」と、GDPRに対する考え方を述べていた。

さらにスノーデン氏は現在、収集されているデータのほとんどは人に関するものであることから、悪用されているのはデータではなく、“あなた自身”であると指摘。そして「インターネットはグローバルであり、あなたを守れるのは法律でもテクノロジーでもない。私たち自信が唯一、自分たちを守ることができる」という言葉で締めた。

その他、スノーデン氏は政府や巨大企業のデータ収集を前提にしたビジネスエコシステムに対してのリスクを示唆するなど、昨年から続く、欧州のデータに対する考え方にも思想的に近いのではと思われる発言をしていた。

スクリーン越しに登場したスノーデン氏。

IKEAのCDOが語った、「顧客中心主義を超える」

またセッションにはIKEAのCDOであるBarbara Martin Coppola氏が登壇。Barbara氏は、IKEAは自分たちが顧客中心主義では十分でなかったことに気付き、これからは顧客中心主義から人間中心主義に進むべきだと考えているという。人間中心の世界では、企業は顧客中心であると同時に、最もプライベートな空間である家庭や、社会、私たちが住む地球環境に良い影響を与えることを目指すのだという。それは正しいことだから“だけでなく”、持続可能なビジネスを行う唯一の方法だと主張していた。

IKEAでは人間中心主義の取り組みの一貫として、IKEAが家庭用ソーラーパネルの製造・販売を手掛け、すでに数百万の家庭に持続可能なエネルギーを供給しているという。また家具のレンタルサービスの実証実験について取り上げた。そのうえでBarbara氏は「今こそ企業は顧客中心主義から人間中心に移行するべき時であり、それは社会や地球にプラスに作用することができるだろう」との考えを示した。

IKEA CDOのBarbara Martin Coppola氏。

次ページ 「デジタル時代におけるブランドの再構築とは?」へ続く

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