日本アドバタイザーズ協会(以下、JAA)と日本新聞協会は共催でセミナー「異種格闘技の時代、新聞は何を提供できるのか?」を11月12日に開催。主にJAA会員の他、新聞社や広告会社の関係者らが多数招待された。昨今、新規メディアの存在感が増すなか、SNSとの連携による拡散力の強化など、新聞広告の新たな活用事例が共有された。
セミナーはディスカッション形式で進行。コーディネーターとして博報堂ケトルの嶋浩一郎氏のほか、電通の尾上永晃氏、博報堂の河西智彦氏、パナソニックの山崎晋吾氏らが登壇した。
嶋氏は冒頭、昨今のメディアをめぐる状況について、「IoT化が進むにつれ、情報媒体はさらに多様化し、まさにメディアの『異種格闘技の時代』が到来するだろう。にもかかわらず、新聞社はいまだ他の新聞社しか(競合相手として)見えていない」と指摘し、社員の意識改革を急ぐよう助言した。
一方、山崎氏は、パナソニックが昨年3月に実施した創立100周年記念広告を紹介。創業者・松下幸之助氏との“つながり”をより身近に感じてもらおうと、各都道府県で異なる紙面展開がなされた。
同氏は、「広告掲載日当日の朝から電話が鳴り始め、手紙でもたくさんの激励の言葉をもらった」と話し、「新聞広告はデジタル以上に質の高い双方向コミュニケーションを可能にする」と語った。
尾上氏は、自身が関わった、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の連載終了を告知する広告の企画背景などを説明した後、「この広告ページがメルカリで非常に高値で売られていた。こうした『モノ』として価値を持つ広告は新聞だけだろう」と評価した。
最後に河西氏は、昨年末に掲載された幸楽苑の新聞広告『2億円事件』について、「単に社員が休むという話に終わらせず、働き方改革とつなげて社会性あるニュースにしたかった」と企画の意図を説明。そうした“社会性”を考慮した結果、おのずと活用するメディアは新聞に決まったという。「これがテレビやデジタルだったら、(同じ広告でも)受ける印象はまったく異なっただろう」(河西氏)。
また、普段新聞を読まない人にもリーチするよう、SNSを活用。Twitter上では広告を撮影した写真が約20万リツイートされたという。さらに、休み明けの1月2日の幸楽苑の総売上は過去最高を記録。同氏は、「この売上は新聞がつくったものだ。私はいまでも新聞の力を信じている」と話し、業界関係者へエールを送った。