「CES2019」と「CES2020」の間 ― いまGlicoの中で、何が起きているのか? ヘルステック篇

2018年に江崎グリコ(以下、Glico)では、米国・ラスベガスで開催された「CES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)2018」に初出展しました。当時は世界的な家電の見本市である「CES」に、なぜ食品メーカーのGlicoが出展したのか? と各種メディアでも取り上げてもらいました。
出展の理由は近年、Glicoがテクノロジーを既存事業に取り入れることで、今までにない新しい顧客体験の提供に取り組んできたためです。
以後、2019年の「CES」も継続して視察しています。「CES2020」の開催が来年1月と目の前に迫る中、この1年の間にGlicoの中で起きている、テクノロジーの潮流を踏まえて取り組んだ事例を紹介したいと思います。

パパとママのコミュニケーションのズレを解消するアプリを開発

前回の本レポート(玉井博久著)では、「CES2019」をきっかけに、Glicoの中でスポーツテックとブランドを融合した新しい体験づくりが始まっていることを紹介しました。

今回はGlicoの中のチャレンジの2つ目を紹介します。「CES2019」で前年に比べて、展示スペースも大きくなり、しっかりと存在感を示していたのがヘルステックのブースでした。睡眠管理や育児サポート、心拍数のチェックなど多岐にわたるテクノロジーが紹介されていました。こうした人々の健康をサポートするテクノロジーは、栄養素グリコーゲンに着目して子どもの健康を後押しする栄養菓子「グリコ」の販売を始めた当社こそ、取り込んでいかなければならないものだと感じました。

そこで、2019年2月に「Co育て(こそだて)プロジェクト」を発足。未来を築いていく子どもたちのココロとカラダの基礎をつくる人生最初の1,000日間に目を向け、まずは妊娠~1,000日間のパパ・ママが、妊娠期から和気あいあいと(Communication)、上手に協力しながら(Cooperation)、いっしょに子どもを育てる(Coparenting)を応援するプロジェクトです。その活動の中心となるべく開発したのが、アプリの「こぺ」です。

「こぺ」はパパ・ママのコミュニケーションアプリです。欧米で研究され浸透している【Coparenting(コペアレンティング)】の思想に基づき、妊娠から1,000日間に起こりがちな夫婦間のコミュニケーションのズレを解消するための仕組みを多く搭載しています。コミュニケーションのズレは当人同士ではなかなか気づかないもの。アプリを利用するお客さまから「初めての子育てで不安が多い中、お互い遠慮していた部分を埋めることができた」といった感想をいただいています。

アプリ「こぺ」の最大の特徴は、夫婦がペアリングをしないと使用開始できない点にあります。新規ログインに対するハードルは上がりますが、Co育てを実践するためにこのハードルをはじめに越えてもらいたいと考えています。また、育児ログ機能があるため、夫婦で子どもの成長を共有することも可能。育児ログに記録をつけると、メッセンジャー上で知らせてくれるので、離れている子供の状況を知ることができます。

さらにパパ・ママ専用メッセンジャー機能では、妊娠から1,000日間に特化した「子育て」「家のこと」「話そう」等のテーマに基づく、お茶目なスタンプを多く搭載しています。例えば、『今日は遅くなります、ゴメン!』『トイレそうじお願い、便座のウラもお願い』という、ちょっとカドが立ちそうなコメントを可愛くスタンプ化しており、きちんと相手に伝えることで、夫婦間のコミュニケーションのズレを解消することを目指しています。

今後は、Co育ての浸透を加速させていくべく、テクノロジーをさらに活用して赤ちゃんの状況を把握しパパ・ママで共有するための機能開発を考えています。また父母子手帳として、アプリ「こぺ」の育児ログをお使いいただけるように、アップグレードも予定しています。こうした機能を更新していくことで、パパとママが理解し合い、ふたりで楽しんでCo育てすることにつながればと考えています。目指すのは、“パパとママが笑顔だからこそ、子どもも笑顔でいられる”世界です。

■アプリ「こぺ」は、2019年第12回ペアレンティングアワード「モノ部門」を受賞


著者
江崎グリコ 代表取締役 専務執行役員
江崎悦朗

2004年江崎グリコ入社。マーケティング部を創設し、初代マーケティング部長に就任。その後マーケティング本部長を経て、現在は海外事業を牽引。さらに、経営戦略、コーポレートコミュニケーション、IT戦略等を管掌。

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