BtoBのサイエンス「行動プロセス管理」
一方、今度は広告における「セールスパーソンシップモデル」について改めて考えてみましょう。
行動モデルの基礎であるAIDAはもともと広告やコミュニケーションから来た考え方ではなく、セールス(営業)の説得のプロセスを明確化したものがもとになっています。つまりAttention(注意)Interest(関心)Desire(欲求)Action(行動)とは、もともとはセールスパーソンが顧客と面と向かった状況で自らの商品やサービスを売り込む際の行動ステップを語ったものでした。
その後、広告の効果計測の管理手法としてDAGMAR(Defining Adverting Goals for Measured Advertising Results 計測された広告の指標のための広告目標の定義)により、Awareness(認知)、Comprehension(理解)、Conviction(確信)、Action(行動)として広告の結果を判断するモデルとして発展していきます。
このふたつは、ほとんど同じように見えますが、この用語の微妙な変化を見ていくと、AIDAはセールスパーソンが自分の目の前の顧客の行動変容に注目しているのに比較して、DAGMARは広告におけるコミュニケーションの「状態(注意ではなく認知、関心ではなく理解)」に主眼が置かれています。これは、AIDAがよりセールスを中心とした行動モデルであるのに対して、DAGMARのほうがより広告が主役の考え方であるということです。
実は、このAIDAのような「セールスの行動プロセス管理」は、今のようなデジタルテクノロジー中心の世界にあって特にBtoBビジネスでは当たり前のモデルになりつつあります。いわゆるセールス・フォース・オートメーション(SFA)と呼ばれるセールスの行動管理と同じだからです。
マルケトの社長を務めた福田康隆氏の著書『ザ・モデル』にはセールスフォース・ドットコム勤務時代から構想してきたBtoBにおけるセールスの行動管理と、その行動ステージの役割分担を含めたマーケティングモデルが詳細に語られています。福田氏の著書によると、アメリカのBtoBのマーケティングモデルやそれをテクノロジーによって発展させたセールスフォースのようなツールは、基本的には「セールスの行動プロセス管理」に主眼が置かれているということがわかります。
そして、このことによって現在、商談して顕在化している売上だけでなく、今後の予測も含めてビジネスのパイプライン全体がどのような状態にあるかを集合的に、量的に把握することができるようになっているわけです。セールスの行動プロセス管理は、属人的な能力やスキルに頼っていたセールス活動を、より科学的に管理し役割分担することで効果的かつ効率よくセールス活動を推進するためのものです。