リアルとデジタルをなめらかに繋ぐコミュニティマーケティングの未来
佐渡島:ビジネスにおいてもコミュニティマーケティングにおいても、リアルかデジタルかの二択ではなくて、これを全部なめらかに繋いでいくことが重要で、これが完璧に達成できている企業はまだ存在しない。Amazonのように、ECからAmazon Goのようなリアルに入ってきている層と、大手コンビニエンスストアのように、リアル店舗からデジタルに攻めて行こうとしている層のどちらが早く双方を制することができるか。いま世界中で、競争が起きていると思います。
この勝負の鍵になるのが顧客情報で、その収集において起点となるのが実はSNSだったりする。しかしリアル店舗の側は知見が薄く価値を甘く見積もっていて、SNSを表層的なバズを狙うだけのツールと考えていることも多いようなので、そこには危機感を抱くべきかもしれません。
天野:逆に言えば、中長期的な施策を打てれば競争優位性につながるということですね。生活者とのつながり、それを活かした共創のムーブメントは今後も止むことなく続いていくはずです。そういう意味で、本日話題に出てきたような取り組みは、啓発的であるとともに業界全体の後押しでもあるなと思います。
佐渡島:コミュニティマーケティングは全部を企業がコントロールしようとするのは難しい。例えば「タビジョで旅行に興味を持ったとしても他の旅行会社で予約したらどうするのか」と、誰かが言っていたらこの成功はなかったのではないでしょうか。全体的なパイが増えることで、H.I.S.のビジネスに繋がる分も増える、という中長期的な話が通じるのかが重要です。
全てを管理しようと思うかどうかでアイデアも全く変わってくるはずで、管理しようとして画一的になったコミュニケーションは、人の感情を揺さぶることはできません。
あと今までのマス広告を活用してきたマーケターの人たちは予算を使う発想が強く、コンバージョン意識が弱かったのに対し、近年のデジタル系の人たちはコンバージョンがすぐできることを好む。だからコミュニティマーケティングのような不確かで中長期的な施策は、本来はデジタルに向いた仕組にもかかわらず、なかなか取り組めない。
創業者オーナーがコミュニティの重要性を理解している企業で言うとアットコスメや食べログなどはコミュニティが発達していますが、短期的な戦略しか取れないデジタル系の会社でコミュニティが発達してるところは少ない。
短期的なコンバージョンを見ることができる時代に、その中で中長期的な視野でどういった施策を打っていくのかが重要な時代になっていると思います。
天野:おっしゃるように、社内の理解がまだ得られなくて…という悩みをお持ちの方もいらっしゃいます。そういったどうしても上司を説得しなければいけない場合は、日本的かもしれませんが、上手くいっている事例を見せるという手もあるかなと思います。どうなるか分からないという不安を取り除く効果が期待できるという意味で、理論とケーススタディは大切ですよね。『シェアしたがる心理』もそんな時に活用していただければと思います(笑)。
※本記事は「シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~」の重版決定を記念し、帯記載の推薦文をご寄稿いただいた佐渡島氏と著者・天野氏との対談を基に作成しております。
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