さて、このような状況から、まずはイメージをどうやって変えたらいいのかを考えると、触れる場所やできる場所を作っていくことは大事で、それと同時に地元から受け入れてもらう活動と共存する仕組みを考えなければいけない。つまり、現在問題となっているマナー問題を解決しなくてはならない。マナーをいきなり守れと言うだけでは伝わらないとすると、できるだけ小さい頃からそのような教育を行っていく必要がある。
そんなことも念頭に入れて、街を舞台に中学生以下の選手が参加する新しいストリートスポーツの大会を行いたいと思った。その第一歩がU15ストリートスポーツコンペティション“NEXT GENERATIONS”という形である。
最大の目的をストリートスポーツ振興とマナー啓蒙として、住民や若年層が積極的に参加できるアーバンスポーツプロジェクトである。若年層、特にU15に焦点を絞ったストリートスポーツコンペティションの実施を基軸に、トップアスリートによるショーケース、体験イベント、スクール事業や他のイベントとの連動なども見据えた包括的なプロジェクトを目指して、更に渋谷区企業であるカシオ社などの全面的なバックアップを受けて2018年度に発足した。
そもそもスケートボードやBMXフリースタイル、フリースタイルバスケットボール、ブレイクダンス(ブレイキン)、ダブルダッチなど、渋谷のストリートカルチャーとこれらのストリートスポーツは密接に関連している。かつての渋谷ではあちこちでこれらの練習に励む若者の姿が見られた。
しかし渋谷の再開発が進む過程で、渋谷からストリートスポーツの憩いの場が減少、シーンにおける渋谷の存在感が急速に薄まっていることは事実だ。一方、広島市や川崎市での大規模イベント開催、また日本各地に本格的スケートパークが相次いで建設されるなど、若年層へアピールできるストリートスポーツへの各所による積極的な取組が顕著となってきている。
ブレイクダンスのシーンについて話せば、やはり渋谷で活動をしたい、もっと場所が欲しいといった要望が非常に多く、現在自分ができることはなんだろうと考えて、実行委員会を発足することにした。渋谷から生まれたストリートカルチャーをもう一度渋谷にきちんと根付かせる、渋谷には何かが生まれる力があるという可能性、次の世代にきちんとしたかたちでそれを残していこう、というのがNEXT GENERATIONSプロジェクトの原点である。
繰り返しになるが、このプロジェクトの最終的なゴールは4つある。
(1)若年層がストリートスポーツに触れることによるスポーツへの興味関心強化とマナー啓蒙、(2)渋谷区民のみならず渋谷で働く人、学ぶ人たちが積極的に参加できるプラットフォームを作り、地域社会への貢献と持続的な発展を促すこと、(3)渋谷から日本・世界へと発信・展開することで社会全体の発展に寄与すると同時に、渋谷という街のブランドイメージを強化する、(4)実行委員会方式により参加する企業や団体、個人など多くの方に関わっていただくことで、皆で共に次世代をサポートする体験を共有することである。
2019年度も紆余曲折ありながらもまずは大会までこぎつけ、カシオのみならず、ミクシィやニューバランスといった新しいパートナーの参加や多くの協会からもサポートを得ることができた。BMXが世界大会と重なり参加できなかったが、今回、スケートボード、ブレイキン、そしてダブルダッチのコンペティションを9月21日(土)~22日(日)の2日間に渡り渋谷ストリーム稲荷橋広場にて開催し、2日間で延べ5,000人の観衆が会場に詰めかけてくれた。
今回はSOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA(SIW)というSIW実行委員会と渋谷区の共催する渋谷〜原宿〜表参道エリアを中心に、多拠点でカンファレンスや体験プログラムが開催される都市回遊型イベントの一環として開催された。
各競技のコンペティションには、その活躍が注目される中学生以下の選手たちが集結するのみならず、スケートボードとブレイキンではエントリー枠を設けて、中学生以下であればだれでもチャレンジできる機会を提供。スケートボードでは1名、ブレイキンでは4名が一般予選を勝ち上がり、トーナメント形式による白熱したバトルが繰り広げられた。声援に湧く会場では次世代を担う若い才能がぶつかり合った。
今回更に進化したのは、前回同様、渋谷区と渋谷区教育委員会が後援についているが、それ以外にも日本アーバンスポーツ支援協議会、 日本ダブルダッチ協会、日本ダンススポーツ連盟、ワールドスケートジャパンといった各競技団体がこのプロジェクトに共感し、後援についてくれたことは大きい。我々のような外郭団体がやる意義があると思うと同時に、もっと多くの企業や団体にもサポートしてもらえるように実績を出さないといけないと思っている。
参加選手たちからも、“技が決まったときの歓声が嬉しかった”、“皆が自由に踊れるのが良かった”、 “この大会に向けてたくさん練習してきたので、その成果が出て良かった”というコメントがありながらも、審査員からは、“普段の大会で10代後半の子たちに混ざってしまうと目立たない子が、この年代だけになることですごさが際立ち、改めてその選手の上手さに気付いた”、“この大会に出場できるように努力している子もいると思うのでとても良いイベントだった”、“同年代だけのバトルというところで、子供たちも生き生きとしていてとても楽しんでいたし、業界自体も次のステップに進んだ”という言葉があった。