TikTok内で大流行したフレーズを公式プロモーションに活用
宮岡:「ブックオフ」は中古書籍を取り扱っているイメージが強いと思いますが、ここ数年は洋服や楽器、家電など書籍以外の商品を扱う店舗を多数展開しています。しかし、現在の実態とは裏腹に、多くの消費者の間で「本を売るならブックオフ」というコピーのとおり“本屋”としてのイメージが根強いことは、多角的に事業を展開していく上で課題でした。
そこで本屋なのに「本だけじゃない」という新たなブランディングを行う目的で、3月末に寺田心さんを起用したテレビCM(『本ねぇじゃん』篇/『すごいやん心くん』篇)を放送。すると「ブックオフなのに本ねーじゃん」というCM内のフレーズが、SNS上で想像以上の盛り上がりをみせたのです。ツイート数や、この特徴的なフレーズを真似た動画のアップロード数は、長期にわたって増加し続けました。ここまでの盛り上がりを生んだ大きな要因のひとつが「TikTok」でした。
松井:「ブックオフなのに本ねーじゃん」は、『2019年上半期ティーンが選ぶトレンドランキング』(マイナビ調べ)のコトバ篇で第4位を獲得するほど話題に。この現象を、うまくブックオフさんのプロモーションに活用できないかと考えました。そして、デジタルネイティブ世代のユーザーが多いTikTok上でプロモーションを行い、ブックオフの潜在顧客層にアプローチできるのではないか、というご相談に至ったのです。
宮岡:それとフレーズを真似た動画に対して、負けてられないという謎の感情が出てきまして(笑)
「おもしろ」「奇抜」路線で、総再生回数は6000万回を達成
秦:今回の施策は、もともとTikTok内で話題になっていた素材を、公式でハッシュタグチャレンジ※化するという初めての試みでした。施策以前から、TikTokユーザーはテレビCMから「ブックオフなのに本ねーじゃん」というフレーズを輸入して楽曲にしたり、イラスト化したり、アニメーションにしたりと、多様な表現を用いてトレンド化させていました。
そこで今回は、「言いなり選手権」や「天使と悪魔の命令ゲーム」などTikTokのヒット曲を多数制作してきたワタルさんに、「ブックオフなのに本ねーじゃん」を使ってノリやすいビートの楽曲・振付を考案してもらい、ユーザーに面白く楽しんでもらえるような仕掛けを設計していきました。その際、すでに「ブックオフなのに本ねーじゃん」のフレーズで動画をあげていたインフルエンサーを起用したり、公式だからと規制をかけることなく、自由なクリエイティブで動画をあげてもらったりと、すでに盛り上がっているブームの“ノリ”を自然に引き継いでいけるように工夫しました。
宮岡:テレビCMのサブキャストとして出演されていた役者さんが、ハッシュタグチャレンジの「お手本動画」に出演しています。そういった細やかな仕掛けにも、ユーザーたちは盛り上がっていましたね。
秦:はい、お手本動画を見たユーザーたちが「このお手本動画に出ている人たち、見たことがある!」「いったい誰だ?」と盛り上がっていましたね。テレビCMと微妙にリンクさせ、それをユーザーたちが楽しんで探っていくような仕掛けが、うまく働いたと思います。
施策は9月21日から10月1日までの期間で実施しましたが、開始して数日で動画アップ数が飛躍的に伸びました。「かわいい」だけでなく「楽しい」「二人で撮れる」など、シチュエーションを変えてお手本動画を出すなど、多様性のあるクリエイティブを促す工夫もしています。
宮岡:その結果、男の人や年配の方もチャレンジしてくれていて、本当にユニークで素敵な動画が、たくさんTikTok上に投稿されていたと思います。
秦:このハッシュタグチャレンジの投稿数は、期間内で約5000投稿。この投稿数の場合、通常なら4000万回くらいの再生数になるのが平均的ですが、今回は総再生回数が6000万回を上回りました。これまでのハッシュタグチャレンジの企画よりも、「奇抜さ」や「中毒性」を重視したことがユーザーのインサイトにも合致していて、繰り返し動画を視聴する方が多くなったのではないかと思います。
投稿動画:https://www.tiktok.com/@bookoff_official/video/6735730766883441921
投稿動画:https://www.tiktok.com/@bookoff_official/video/6735731519538695426
広告然としていない面白コンテンツで、若年層のブランドリフトUP
秦:最近は「ミーム」と呼ばれる現象が、マーケティングの文脈でも注目を集めています。ミームとは、インターネット上でユーザーがマネとアレンジを重ねて楽しみながら拡散していくコンテンツのこと。今回の取り組みはまさに、この現象をうまく捉えたものではないでしょうか。
メディアの考え方は「ひとつのメディアでどれだけリーチするか」から「複数メディア・同一素材でどれだけフリークエンシーを上げられるか」へと変化してきましたが、現在TikTokやSNSが実現しようとしているのは「同一メッセージ・多素材・多手法でどれだけフリークエンシーを上げられるか」です。企業のメッセージを使って「好きに遊んで良いよ」とミーム的な楽しみ方を提案されたのが、本施策における最大の特徴だったと思います。
宮岡:TikTokさんとの取り組みは初めてだったので始めは手探りでしたが、最も重要なのはブランドメッセージが拡散することであり、あとはユーザーさんに自由に遊んでもらえれば良いと考えていました。毎日の投稿数、再生数がどんどん伸びていくのを見ていて、社内でも「これはただ事ではないな」と実感が湧いていったような気がします。更に、キャンペーン終了後の今でも再生回数がじわじわ伸び続け、今では総再生回数が1億回を超えていますし、誰も想像できていなかったと思います。
秦:また、総再生回数の多さに加えて特徴的だったのは、今回の広告に接触した13~17歳のユーザーが、非接触ユーザーに比べて広告記憶、ブランド好感度、来店意向がいずれも20%近く向上していたことです。
今回の取り組みは「広告」ではなく「面白いコンテンツ」としてデジタルネイティブ世代に受け入れられ、結果として「ブックオフは面白いことをしているんだ、行ってみたい」と純粋に思ってもらえたのではないかと思います。
松井:動画広告が嫌われたりスキップされがちな中で、TikTokは広告というよりも、もはやひとつの“遊び道具”としてのコンテンツになっているのだと感じました。広告然としていなかったからこそ、ユーザーからの拒否反応もなく浸透したのではないでしょうか。結果的にはフリークエンシー数、ブランドリフト率はともに高く、潜在顧客であるデジタルネイティブ世代に対してブランドメッセージが届けられており、もちろん広告としても良い結果を残せたと思います。
宮岡:テレビCMなどを通じて、世間の人が「何だこれは?」とざわざわするようなものをつくり、それがTikTokなどを通じて世間に拡散されていくというのは、これからの時代に王道となる、ひとつの方程式だと思います。今後も新たなキラーワードが出てきたら「拡散させるのならTikTok」と活用していくことができるかもしれません。
松井:もはやテレビCMはテレビCM、デジタルはデジタルと、メディアを縦割りしている時代ではなくなってきているとも思いますね。メディア間の垣根は消えつつあって、「TikTokで反響がありそうなテレビCMをつくろう」といった仕掛けも、どんどん現れていくのではないかと思います。
秦:TikTok内では毎日のようにトレンドが移り変わっていきますが、ユニークであれば、きちんと反響はある。「面白いものをつくろう」というシンプルかつ最もクリエイティブな挑戦も、試してみる価値はあるのではないでしょうか。ぜひまた、何か面白い仕掛けをご一緒できたらと思います。
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