ブランドに足りないものを発見する、「未充足の欲求」という考え方

【前回コラム】「インサイトはSDGsにも応用可能? 社会問題解決にも有効な「本質的な不満」の見つけ方」はこちら

?野家の「超特盛」ヒットに見る、未充足の欲求を発見するためのアプローチ

人を動かす隠れた心理「インサイト」をビジネスに活用するためには、どのような考え方に基づき、実際にどのように進めていけばよいのか?その方法を具体的に紹介していく、この連載。今回のテーマは「未充足の欲求の発見」です。

最近、人の隠れた心理である「インサイト」に迫り、「未充足の欲求を発見」し、成功を収めたのが?野家です。

?野家では2019年3月に牛丼の新サイズ、「超特盛」を発売し、が想定以上のヒットを記録。このヒットにより、?野家ホールディングスは赤字から黒字に転換しました。超特盛は、コメの量は大盛や特盛と同じですが、肉の量が大盛の2倍という商品。並盛より400円高い780円ですが、発売後1カ月で100万食を販売しました。

どうしてこのようなヒットが生まれたのでしょうか? そのヒットの背景には、「ブランドに足りないものの発見」がありました。

?野家のケースのように、いまブランドに足りないもが何かが分かれば、ブランドは消費者から選ばれるようになります。しかし、その足りないものとは企業側の視点だけでは出てきません。あ「消費者が求めているが十分に充たされていない想い」、その“未充足な欲求”を理解する必要があります。

消費者の行動や価値観の変化にブランドが対応できないとギャップが生まれ、“未充足な欲求”が生まれます。時代の変化に合わせて、このギャップを上手に埋めていかなければ、ブランドの業績は衰退してしまうのです。

では、「超特盛」が埋めたギャップ、すなわち未充足の欲求とは、何だったのでしょうか?

それは「コメはほどほどに、具材をもっとがっつり食べたい」という欲求です。

消費者の中に、こうしたインサイトが生まれた背景には、次のような消費者の行動や価値観の変化があります。

・炭水化物は少な目に、タンパク質と野菜でお腹を満たすと健康に良いという価値観の増加

・具材をつまんだ後、コメも含むどんぶりでシメる、ちょい呑み客の出現

?野家ではこの変化から生まれたギャップ(未充足の欲求)を、強みである主力商品の牛丼のサイズ変更で埋めることに成功したわけです。自社ブランドの強みを生かしつつ、時代の変化に対応した好例と言えるでしょう。

次ページ 「消費者の「未充足の欲求」を発見するための2つの視点」へ続く

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大松 孝弘(株式会社デコム 代表取締役)
大松 孝弘(株式会社デコム 代表取締役)

大手広告会社を経て、2002年デコムを創業。2006年に日本初のインサイトリサーチに関する書籍「図解やさしくわかるイ ンサイトマーケティング」を上梓する。株式会社デコムは、設立以来、一貫してインサイトリサーチによるアイデア開発を提供。近著に『「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方~』など。

大松 孝弘(株式会社デコム 代表取締役)

大手広告会社を経て、2002年デコムを創業。2006年に日本初のインサイトリサーチに関する書籍「図解やさしくわかるイ ンサイトマーケティング」を上梓する。株式会社デコムは、設立以来、一貫してインサイトリサーチによるアイデア開発を提供。近著に『「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方~』など。

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