ブランドに足りないものを発見する、「未充足の欲求」という考え方

消費者の「未充足の欲求」を発見するための2つの視点

ブランドと消費者の間にあるギャップが未充足の欲求であり、それはインサイトそのものです。

消費者のインサイトとは、大きくは次の3つに分類されます。それが「価値のインサイト」「不満のインサイト」「未充足のインサイト」です。価値のインサイトとは何らかの対象に対して「良い」と感じるポジティブな心理、不満のインサイトは、求めているものが充たされていない心理状態であり、否定的な心理を指します。

それでは、今回のテーマである未充足のインサイトとはどのようなものでしょうか。それは「求めているがまだ充たされておらず、こうなったらよい」という欲求の心理です。

消費者に「このブランドに足りないものは何?」「どんな点が物足りない?」と尋ねてみても、そのギャップについて答えることはできません。なぜなら成熟化が進んだ現代において、消費者は多くのブランドに対して、「だいたい、よいんじゃないですか?」という気持ちを抱いているためです。そのため、彼らの口から発言される多くは、表面的で核心を捉えたものにはならないのです。

それでは、どうすればよいのでしょうか?

ひとつは、自社ブランドだけではなく、その周辺の生活領域まで視野を広げることです。超特盛の例では、消費者の「食・健康」という生活領域で起きている価値観の変化を捉えています。

もうひとつは、新しい価値の萌芽を示すような、新奇性のある消費者行動に着目することです。超特盛の例では、ちょい呑み客の新奇性のある行動に着目しています。

生活領域にまで視野を拡げる時には、「生活の14分類」を参照するのがおすすめです。

■生活の14分類

これは、人がお金や時間を使うと考えられる領域を14の項目に分けてまとめたもので、私たちはこの分類を使えば、どのように生活領域を広げて考えればよいかがわかると考えています。

改めて、ブランドに足りないもの=未充足の欲求を見つける方法を整理すると、次のようになります。

1)当該ブランドの周辺の生活領域で起きているトレンドに着目し、そこで求められる価値から自社ブランドに足りないものを導き出す

2)n=1でよいので、新奇性のある消費者行動に着目し、そこで求められる価値から自社ブランドに足りないものを導き出す

消費者の「ほんとうの欲求」は、表面的なやり方を行っていても見つけることはできません。そのような欲求に消費者はほとんど無自覚だからです。市場全体が成熟化し、あらゆるプロダクトやサービスが「だいたい、よいんじゃないですか」と評価されてしまう時代に、人々の欲求は可視化できない領域に隠れています。

そのような状況では、インサイトの発想に基づくアプローチこそが欲求を明らかにしていく道です。これらを活用して今、あなたのブランドに求められているものを発見してください。


書籍案内
新刊『ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚』(2020年1月10日発売予定)


チャンスは常に人々の「隠れ不満」の中にある。いま「ほんとうに欲しいもの」は、消費者本人も自覚できていません。社会が成熟した現代に重要なのは、「本人も無自覚な不満」を理解することです。本書では、この「無自覚な不満」を起点にして、「ほんとうに欲しいもの」を見つけるシンプルなフレームワークを紹介します。

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大松 孝弘(株式会社デコム 代表取締役)
大松 孝弘(株式会社デコム 代表取締役)

大手広告会社を経て、2002年デコムを創業。2006年に日本初のインサイトリサーチに関する書籍「図解やさしくわかるイ ンサイトマーケティング」を上梓する。株式会社デコムは、設立以来、一貫してインサイトリサーチによるアイデア開発を提供。近著に『「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方~』など。

大松 孝弘(株式会社デコム 代表取締役)

大手広告会社を経て、2002年デコムを創業。2006年に日本初のインサイトリサーチに関する書籍「図解やさしくわかるイ ンサイトマーケティング」を上梓する。株式会社デコムは、設立以来、一貫してインサイトリサーチによるアイデア開発を提供。近著に『「欲しい」の本質~人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方~』など。

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