ポートレートの印象は衣服、表情、ポーズで決まる
多くの企業トップのポートレート撮影のディレクション経験から、世界の舞台で通用するプレゼンタブルなポートレートの条件を解説しよう。
「企業ブランドとその企業を代表する社長の魅力の両方が、持ちうる魅力が最適な状態で、見る人に快をもって、誤解なく伝わること」。これが何よりも大事。情報が氾濫している現代社会においては、世界中どこからでも企業情報は探し出されてしまうという事実を忘れてはいけない。特に一度どこかに掲載されたポートレートは、たとえそれが日本国内向けに発信した情報に使われたものだったとしても、ネット上では世界中から検索の対象となる。そして、それを目にした人が抱いた印象とともに一人歩きし始める。
言語を介すことなく、見てすべてを理解させることを目的としたポートレートだからこそ、良いものであれば信頼を高める最強の宣伝ツールとなり、不適切なものだと命取り、対面する前に不信感を抱かれチャンスを失う。そう、視覚情報は文字情報よりも伝達スピードが速く雄弁、そして人の記憶に鮮明に刻まれるのだ。
では、グローバル社会において、どのようなものが良い社長ポートレートと言えるのか。企業や業種ごと、そして、展開する市場や対象顧客ごとに、コーポレートメッセージやブランディングのあり方は違う。しかし、どの企業においても共通なのは、清潔感・明快さ・信頼感。それを示しているのは、衣服、表情、ポスチャー(ポーズ)だ。
それでは、筆者がクライアントのポートレートをエヴァリュエイト(評価)/クリティーク(批評)する際のチェックポイントと、ポートレート撮影をディレクションする際の考え方をお教えしよう。是非参考にしていただきたい。
今のポートレート、いつ撮ったもの?
貴社の社長ポートレートは、どれくらいの頻度で撮り直しているだろうか?
社長のポートレートは、その会社を代表する顔と姿を、見る人に対して一瞬にして示し、直感的な判断を仰ぐ重要なブランディング・ツールだ。当然、どのような写真を使っているかによって、企業の意識・体質・思想が露見する部分であるともいえる。どれだけ良いポートレートだったとしても、3年ごとくらいには撮り直す必要が出てくるはず。なぜなら企業の成長は社長の成長と比例する。ますますその顔つきに、強さやエネルギーが宿ってくるからだ。過去の写真のままではそれを示せない。さらなる企業成長のためのブランディングとして、社長のポートレートは3年を目処に撮り直そう。
写真を通して伝えようと思うことはなにか?企業として、そして社長としてのメッセージはなにか?を考える必要もある。よく聞く言葉は、「信頼感を与えたい」というもの。これは当たり前。大切なのは、「どういう部分にどのように信頼感を抱いてほしいのか」。より具体的なメッセージを明確にすることだ。
これらが出来上がってきた写真の完成度を左右する重要なポイント。そこがはっきりするだけで、確実に社長の表情が変わる。社長を務める人物は、目的や方針が明確になることで、一気に行動のエネルギー値が高くなる傾向がある。表情やポーズに、彼らのメッセージが滲み出るのだ。
さらに、おしゃれに見えるか否かではなく、職種・ポジション・目的にふさわしいことも大切。衣服/装いにおける重要なポイントは、クリーン、プレーン、シンプル。「“あったらいいな”は、なくていい」である。
不特定多数の人の目に触れた際を想定して、企業メッセージ、刻み込みたいイメージ、欲しい評価を明確にし、その上で、会社の個性と社長自身のもつ個性とのバランスに合わせて適切なツールとしての衣服を選び、コーディネート方法をとると良い。
また、企業ブランド・社長の存在感を示すべきポートレートなのだから、ブランド物とわかるものを用いるのは、企業ブランディングとして既に戦略負けとなるので要注意。
チェックポイントをまとめると、以下のようになる。
■チェックポイント
・ポジションにふさわしい上質なもの
・サイズ、シルエットのあったもの
・ブランド名のわからないもの
・顔立ちとシャツの襟/インナーの襟空きのベストバランス
・顔立ちとネクタイ選び、結び方とノットの大きさ(男性)
・顔立ちとジュエリーのサイズ、素材、ボリューム(女性)
・スーツ:ネイビー、チャコールグレー(男性)
*女性の場合は、ブラック、ベージュ、アイボリーをはじめとしたベーシックトーンが加わり、男性よりも選択肢の幅が広い。ブランディングによってそれ以外も可能になる。
・シャツ(男性):白、薄いブルー、襟はセミワイドスプレット
・インナー(女性):白、アイボリー、ライトベージュ、薄いブルー、薄いピンク等
・柄は無地
・ネクタイは無地(遠目無地)、小紋柄
・ポケットチーフは不要
・靴:紐靴(男性)、パンプス(女性)は綺麗に磨く
※着用するものは、シワのない状態で