クルマの世界を超えた未来から新しい“移動サービス”を考える
第1部に登壇したのは、トヨタ自動車の未来プロジェクト室に勤める天野成章氏。未来プロジェクト室は、30~40代のメンバーを中心に構成され、2030年以降の未来を見据え、移動に関する新たな価値をつくり上げることをミッションに掲げている。
「未来プロジェクト室では常に生活者視点に立ち、未来に起きたら生活者にとってインパクトが大きいことを見つけるようにしている」と天野氏。そこでクルマ業界の枠を超え、幅広く情報を収集。さらにその情報をもとに「未来年表」をつくり、世の中全体の価値観や健康、エンタテインメントなどのさまざまな分野の変化のシナリオを考察している。
同室では変化のシナリオをもとに、新しい事業プロジェクトを立ち上げており現在、8つのプロジェクトが進行中だ。そのひとつがアプリ「my route」でバスや電車、タクシー、サイクルシェアなどのすべての移動手段を組み合わせてルート検索でき、同時に予約や支払いも完結できるというもの。
「これまではカーシェアやタクシーなど、各事業で個別にアプリをつくっていた。でも生活者のニーズは“とにかく移動したい”ということ。そこで、あらゆる移動のためのサービスを使えるインターフェースをつくることができれば、より多くの人に利用してもらえると考えた。現在、50程度の企業と組んでプロジェクトを進めている」(天野氏)。
円滑なデータ活用を推進優先順位付けも大事
第2部には、クロス・マーケティンググループの中村勝利氏が登壇。
中村氏は「世の中の情報量が爆発的に増え、人々の情報接触行動が大きく変わった今、この情報は自分向けだと認識してもらえるような発信の仕方をしなければ、スルーされてしまう」と話し、受け手を理解するためのデータ活用の必要性を訴えた。
しかしその際、マーケターが社内で直面しやすい課題があるという。例えば、ボトムアップでツールの導入を上申した場合、経営層からは短期での利益貢献が求められる一方、PDCAが思うように進まず、チャレンジした社員が疲弊してしまうといったことなどだ。
この状況に対し、「調査会社も変革をしていかなければならない」と中村氏。さらに「受け手のインサイトを社内のデータ活用施策に役立てていただけるよう、結果の報告に留まらない、活用を前提としたデータ分析の提供によって支援していきたい」と続けた。
若手マーケターが越えるべき課題とは?
第3部では、中村氏を含む20~30代の若手マーケターが4名登壇。
ドームの梶原慶裕氏が日ごろ感じている課題として、「上司に企画を提案したとき、世代による感覚の違いを感じることがある。異なる世代の人に対しても、企画の意味付けを理解してもらえるようにならなければいけない」と話すと、ユニリーバ・ジャパン・サービスの金藤達紀氏も「社内に加え、消費財メーカーは小売店のバイヤーの理解も求められる。
粘り強い説明が必要」と語った。また、中村氏も「新しいことにチャレンジするときに社内の壁に直面するというのは、私たちにとっても大きな課題。小さく転びながら覚えていくことで社内にモデルをつくっていくことを勧めたい」と話した。
さらに議論は、デジタルネイティブ世代のマーケターが、生活者として日々過ごしている感覚と現在のマーケティング施策の間にギャップを感じることはあるか?というテーマに移っていった。この質問に対して3名のマーケターからは、次のような考えが示された。
「企業側の“売りたい欲”が、消費者に見破られてしまう時代と感じている。この環境ではお得だという訴求ではなく、体験が響くと個人的には感じている」(梶原氏)。
「私たちが情熱を込めている割には、広告は見られていないと感じる。見ていて苦にならない広告で、かつ欲しくなるクリエイティブとはどのようなものか。顧客目線というよりも、等身大の自分の感覚で施策を考えるようにしている」(ライフネット生命保険・岩崎那歩氏)。
「私たちマーケターはシャンプーやボディソープのことを常に考えているが、消費者にとってそれらは、あくまで生活のごく一部で決して重要とは言えないもの。そこで消費者を生活者としてとらえ、その生活の中で商品の位置づけを見直す取り組みをしていきたい」(金藤氏)。
3名の回答に対して、中村氏は「自分の人としての自然な反応を自己分析する。世の中の人がどう感じるのかも大事だが、私自身は自身の純粋感覚をより研ぎ澄ませていくべきと考えている。その意味で、日常生活と仕事の感覚の境目がなくなっていくのではないか」とコメント、パネルディスカッションを締めくくった。
お問い合わせ
株式会社クロス・マーケティング
E-mail:pr-cm@cross-m.co.jp
TEL:03-6859-1192