情報通信手段を利用して変わるモビリティサービス
情報通信手段を活用することで、自家用車以外のあらゆる交通機関をスムーズに連携させる「MaaS」(Mobility as a Service)。未来を見据えた新たな「移動」の概念として、自動車企業のみならず各界からその可能性に注目が集まっている。そこで本セッションではMaaSについて、アーキセプトシティの室井淳司氏とジョルダンの佐藤博志氏、デンソーの伊藤好文氏の3人のパネルディスカッションを実施した。
冒頭でアーキセプトシティ代表の室井淳司氏は、MaaSを「売る」ためのマーケティングの観点ではなく、お客さまとの接点の場として捉える観点から話したいと述べた。
それを受け、モビリティをつなぐサービスとしてのMaaSを説明したのが、「日本をMaaS先進国にする」と意気込むジョルダンの戦略企画部部長 佐藤博志氏。「日本は自動車産業に強みがあるので、自家用車の利用比率を減らすことをMaaSの目的にしてはいけない。しかし、世界で普及が進んでいるモバイルチケットの仕組みには追い付いていないのが現状。そこで、既存の交通チケットを安価にモバイル化できる長年の実績と技術を持つ、イギリスのMasabi(マサビ)社との提携を決めた」。
それにより、国籍を問わず二次元コードで公共機関を利用でき、なおかつインバウンドに向けても、多言語対応することで利用者による母語でのチケット購入が可能になると佐藤氏。
「国内外を問わず、利用者がモバイルでチケットを購入すれば、利便性の向上と共に膨大なビッグデータの取得が可能になる。それを広告会社や通信事業者、通信キャリアなど様々な企業と分かち合い、各社が独自の方法で日本を進化する仕組みをつくりたい。そして、日本の隠れた魅力を次々に発信するため、2018年7月に非独占的な企業体連合“J MaaS” を立ち上げた」(佐藤氏)。各企業が自社データと膨大な人流データを掛け合せることで自治体や企業間の多彩なコラボレーションが可能になると説明した。
続いてデンソーの商品企画オフィス長 伊藤好文氏が、自動車自体が自動化された時代のMaaS像について、未来社会を描いたアニメ動画で解説した。「自動車は、移動するものから時間を過ごすものへと変わりつつあり、PCやスマートフォンに近い存在ともいえる。そういった視点で自動車の中を考えると、マーケティングにおいて特別な空間であると考えられる」。
伊藤氏が提案する切り口は「ヒトを運ぶ」「モノを運ぶ」「コトを運ぶ」の3つ。「ヒトを運ぶ際にはセンシング技術を使い、ドライバーの身体状態を把握することが可能になり、安全な運転を実現し事故の低減につながる。モノを運んで届ける際には、決まった場所に縛られず、直接車へと届けることも可能に。“コトを運ぶ”に関しては、リアルな場所に行く前に車内で事前にバーチャル体験をし、チケッティングまで済ませるといった活用法が考えられる」。
室井氏は、日本ではまだ未来の姿として語られている段階のMaaSも、中国では早くも2022年頃には自動運転車両だけが走る都市の基本インフラが完成しそうだと述べ、日本が大幅に遅れを取っていることを指摘。それを受け、官民一体となったMaaS社会のより早い実現に向けて一致団結しようと気勢を上げ、パネルディスカッションは幕を閉じた。