プライバシー保護の先にある、真に顧客が求めるものとは何か? — 2020年のマーケティング展望

顧客個人とブランドの透明な結びつきが価値になるD2C(Direct to Consumer)

プライバシー保護という観点は、個人の権利を守る、という視点のみならず、今後相手が見えないデジタルのような空間でも透明性や本物性を求められるというビジネスの原点回帰的な価値観も含んでいます。北米で今や雨後の筍のように乱立しているワービーパーカーやエヴァーレーン、ボノボスのようなD2Cブランド、あるいはDigital Native Vertical Brand(デジタルを起点として垂直統合されたブランド)の流行は、こういった現在の顧客の価値観の方向性に適っていると言えます。

D2Cはデジタル接点に限らず、化粧品のGlossierのようにリアル店舗を構えることも少なくありません。これは彼らにとっては、単にモノを顧客に届けることの接点として店舗やデジタルを使っているわけではなく、顧客それぞれにとってのパーソナルなブランド体験こそがブランドとの結びつきをつくると知っているからです。

D2Cブランドの多くは、大量に製造し販売する従来の製造業のマーケティングではなく、顧客個人の細かいリクエストに応えるためにデジタルテクノロジーを活用し、時には原価をオープンにして自らが提供する付加価値を明確にすることで顧客の信頼を得ています。

顧客はD2Cに「信頼できる本物の体験」を望む

このようなブランドは個人のプライバシー保護と同様に、顧客個人の権利を遵守して、リアルな接点においても顧客を大事に扱うという一貫性を持っています。そしてそれは、デジタル以前の店舗での1対1の商売と同じような信頼感と関係をつくり出すことで従来と違ったモノ以上の体験を提供することを目指しています。したがって、今デジタルの世界で語られているプライバシー保護問題の背後にある「信頼できるビジネスの関係を望む顧客」の姿がここから見えてくるのです。

次ページ 「サステナビリティは文字通り顧客が求める持続可能な関係性」へ続く

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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