航空会社がCESに初登壇。テクノロジーによって旅行体験を変える
昨年、IBMの基調講演にゲスト出演をしたデルタ航空が、今回は自ら基調講演で登壇しました。いったい、航空会社はCESでどのようなメッセージを発信するのでしょうか?
デルタ航空の基調講演では、CEOのEd Bastian氏が登壇。デルタ航空のアプリの進化、パラレルリアリティという新しい技術、AIを活用した運行管理など、テクノロジーを活用した旅行体験の変革について触れ、航空会社がテクノロジーの採用に取り組むことの重要性と、デルタ航空はそのために巨額の投資をしていることについて語られました。
パーソナライズドコンテンツをひとつのデジタルスクリーンで視聴可能に
デルタ航空は、ミスアプライド・サイエンス社と提携し、“PARALLEL REALITY(パラレルリアリティ)”という新興技術を活用することで、新しい空港の体験を提供するということでした。パラレルリアリティは複数の人が、それぞれの旅程に合わせてパーソナライズされたコンテンツを、“ひとつのデジタル・スクリーン”で、同時に、好みの言語で見ることができる画期的な技術。ARグラスなど必要なく、旅行者はディスプレイを見るだけで、個々にパーソナライズされた情報を得られるというものでした。
とても画期的な技術です。しかも2020年中にデトロイトの空港で実証実験をするとのことで、筆者も是非、体験したいと思いました。
基調講演では、顧客体験以外にも、テクノロジーによる新たな取り組みについて触れていました。なかでも非常に迫力があったのが、Sarcos Robotics(サルコス・ロボティクス)社、自己動力式の着用型ロボット「Guardian XO」の活用です。従業員の怪我のリスクを減らし身体能力を高める世界初の取り組みとのこと。実際に、巨大な荷物を持ち上げるデモストレーションを間近で目撃することができました。
P&Gもデルタ航空もテクノロジーそのものではなく、それによる体験の変革について強く語っていましいた。さらに言えば、テクノロジーの進展に応じて変化する“人間の営み”に対して積極的にテクノロジーを取り込んでいくことが、最終的に顧客に対して素晴らしい体験価値を提供することであり、経営の最も重要な戦略である、とも。
非テクノロジー企業のCESを通したこのメッセージは非常に重く受け止めるべきではないでしょうか。
森直樹
電通 CDC エクスペリエンスデザイン部長 クリエーティブディレクター
光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。