「CES 2020」現地レポート④— テクノロジーの祭典でも、真の主役は「人間中心」と「体験」(森 直樹)

【関連記事】「CES2020」現地レポート③ — テクノロジーによる顧客体験の革新を加速させる P&Gとデルタ(森 直樹)

2020年のテクノロジートレンドを占う最初のイベント、世界最大規模のテクノロジーカンファレンスであるCESが、今年も米国・ラスベガスで開催されました。CESは、4,400以上の企業が世界中から出展し、250を超えるセッションが行われます。その参加者は例年、世界の約160カ国から17万人以上に及ぶ巨大イベントです。
CESは、そもそもは家電ショーとしてスタートしましたが、今日ではテクノロジーとイノベーションのイベントへと変化。スマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、XRなど、先端的な取り組みに触れることができます。ここで触れることができるテクノロジーは、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても注目すべきイベントと言えるでしょう。
オリンピック・パラリンピックイヤーの2020年も、「アドタイ」視点で現地から森直樹が最新情報をお届けします。

CES2020現地レポートは、今回をもって最終回です。改めて今年のCESは、AIや5Gなどのテクノロジーそのものというより、テクノロジーと人の向き合い、利活用に対する期待一辺倒だった印象を持ちました。データとの新しい企業の向き合い方など新しい文脈発信というか、新しい潮流が起きていると感じました。

最終回レポートでは、私のまったくの主観で気になったことなどを五月雨にお届けしたいと思います。

「インポッシブル・バーガー」は、もう食べた?

メディア・ディで、個人的に興味をひかれたのが、Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)による記者発表です。Impossible Foodsとは、2011年に同社のCEOであるDr. Patrick Brown氏によって創業されたカリフォルニアに拠点を置く、植物由来の人工肉や乳製品を製造・開発する食品テクノロジー企業。食料品店でハンバーガーの販売から事業を開始しましたが、現在は米国、シンガポール、香港、マカオの1万7000軒以上のレストランで人工肉を使用した「インポッシブル・バーガー」を提供しています。

同社の記者発表の会場はレストラン。これまでの牛肉テイストの人工肉に加え、豚肉テイストの“インポッシブル・ポーク”と“インポッシブル・ソーセージ”が発表されました。これらは大豆を原材料にしながら、ひき肉の味と食感を模倣したもの。大豆の根に含まれる大豆レグヘモグロビンからヘム(肉に風味と質感を与えるタンパク質)を抽出し、これが“肉”の風味と食感を与えているそうです。このインポッシブル・ソーセージですが、バーガーキングを通して消費者への提供が開始する予定とのことでした。

CESの会場で米国の記者や、日本からCESに参加している多くの方と意見交換をしましたが、何度か「インポッシブル・バーガーは食べた?」と話題になっていました。“インポッシブル・フード” テクノロジーによって、食の体験やライフスタイルそのものを変革するプレイヤーと考えると、CESでの発信は理にかなっていたのではないでしょうか。記者発表に詰めかけたメディアの数や反響をみると、CESでの彼らのPRは成功したといえそうです。

レストランで記者発表をする、Impossible FoodsのCEOであるDr. Patrick Brown氏。

“インポッシブル・ポーク”のサンプルとして試食提供されていたシュウマイ。

筆者がCES後に立ち寄ったサンフランシスコの大衆レストランでオーダーした“インポッシブル・バーガー”。事前情報なしで食べると普通のハンバーグと変わらない味・食感・風味である。正直美味しい。植物由来なので、次の日にお腹がもたれないのもポイントだ。

 

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