サービス化が進む中命題となる“リテンション”
アフィリエイトを中心に、デジタルマーケティング支援を行っているMacbee Planet が今、注目しているのが「リテンションマーケティング」だ。2019 年5 月にはサブスクリプションサービスなど定期購入・定期課金型のサービスを提供する事業者に特化した解約防止・分析ツール「リテンションマーケティングby Robee」をリリースした。
「ユーザーとのOne to One の関係構築が図れるようになってきた中で、当社が注力してきたアフィリエイト事業においても定期購入コースに誘導し、顧客のロイヤル化を図ろうとするケースが目立ってくるようになりました。その際、長期利用しているユーザーから得られた原資をもとに初回価格をディスカウントすることが多いのですが、2 回目以降、継続しないユーザーが多ければ、この事業モデルは成立しない。そこで解約を防止し、いかに既存ユーザーを維持するかが大きなマーケティング課題となってきたのです」。
こう語るのは、「リテンションマーケティング by Robee」ブロダクト責任者の佐野敏哉氏だ。CV に至るまでのアクイジションの段階においても消費者のニーズを理解したコミュニケーションが重要であるのと同様に、リテンションにおいても「なぜ解約したいのか」というニーズを把握することは不可欠なのだという。
加えてサブスクリプションサービスの台頭が物語る、モノの“ 所有”からサービスの“ 利用” への消費行動のシフトは、リテンションマーケティングの重要性を高めた。様々な産業がサービス化していく中で、解約はますます身近になってきている。
「日本人の国民性とも言えると思いますが、解約時に不平不満を語ってから解約したいというユーザーは多いです。不平不満にはユーザーのニーズが凝縮されており、それは企業が対応しなければならない改善点。私たちのツールは解約を防止するだけでなく、きちんとユーザーの声に耳を傾けるためのパイプ役にもなっています。
日本人のために日本人が開発したチャットボット
Macbee Planet に参画する以前は、外資系のツールベンダーをわたり歩いてきた佐野氏。キャリアを通じて感じたのは、外資系のソリューションは日本人ユーザーに深く寄り添っていないのではないかということだった。特にチャットボットに使用されているエンジンのほとんどは英語でプログラミングされている。そのため日本語の識字率に問題があるだけでなく、違和感のある日本語翻訳が表現されてしまい、解約という大事なフェーズでは、ユーザーの解約を決定づけるインシデントを引き起こしかねない。
「『リテンションマーケティングby Robee』は、日本人が日本人のために開発したチャットボットを備えている点が大きな特長です。またデータ分析にはAI を活用している一方で、チャットボット運用の中心となるシナリオの設計にはあくまでも専門の人間が介在することで、ストレスのない自然なコミュニケーションを可能にしています」。
また最新機能として「インテリジェンスレスポンス」という、感情や文章の内容によって表示速度をAI が変化させ、より自然に人間と会話をしているように改善を図る技術を実装した。ユーザーがチャットボットと会話をすればするほど、会話の深度と解約防止率が比例する実績データがあることから、現在はユーザーのチャットボットの利用率を高める研究や開発を行っている。
いま使っているユーザーに耳を傾けて、理解する
佐野氏はリテンションマーケティングの導入事例として、バンダイナムコの定額制動画配信サービス「バンダイチャンネル」を紹介。解約ページにチャットボットを設置し、「仕方なく解約する」という解約理由のシナリオを設計したところ興味深い結果が得られたという。
「解約理由のうち、結婚や引っ越し、入院など『仕方がない』ケースがある一定数いることがわかりました。そこで例えば、結婚を理由に選んだときは、きちんと『ご結婚おめでとうございます』とお祝いをし、『落ち着いたら戻ってきてくださいね』というコミュニケーションを取るようにプログラミングしました」。
その結果、一定のユーザーがそこで解約を踏みとどまるようになった。佐野氏は、「大切なのは思いやりをもってユーザーを理解し、綿密にコミュニケーション取っていくこと」だと話す。ユーザーとの良好な関係が築ければ、解約してしまったとしても、再入会の可能性は大きく変わってくる。
同ツールの導入事例には動画配信サービスが多いが、最近では物品通販の定期コース、またコーヒーショップなどのサブスクリプションサービスでも導入が始まっているという。佐野氏は、自動車保険など定期的な契約更新を要する金融分野や、自由化が進んだガス・電気などライフラインの提供事業者との相性も良いのではないかと考える。
解約時にチャットボットを利用するユーザーは約60%。そのうち何らかの意見を書いてくれるユーザーが約40%。膨大なフィードバックの中から数々のユーザーの本音を知ることができるだけでなく、チャットボット利用者のおよそ10 人にひとりが解約を踏みとどまるなど大きな成果を上げている。
「企業は、広告宣伝や新規顧客の獲得など、どうしても表面的な施策や効果を追い求めがちですが、大切なのは、いま使っている顧客をきちんと理解し、大切にしていくことなのではないでしょうか。市場が飽和しつつある中で、安易に新規獲得のコストを既存顧客にしわ寄せするのではなく、LTV の高いユーザーに還元していくような健全な市場へと変革していく必要があると考えています」。
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