“身近な”ロイヤル顧客の存在に気づき、企業の資源とするマーケティング戦略
次世代の顧客エンゲージメントソリューションを提供するチーターデジタルは2020年1月17日、渋谷ストリームホールで日本市場向け新製品発表イベント「NEW Cheetah Digital Japan Opening Event」を開催した。
チーターデジタルは1998年に米国で創業し現在、日本を含む 世界13カ国、26拠点で事業を展開する独立系のグローバルマーケティングソリューションプロバイダー。2017年にExactTarget、Salesforceのエグゼクティブバイスプレジデントを歴任したサミール・カジ氏がグローバルCEOに就任し、“新生チーターデジタル”を結成。次世代の顧客エンゲージメントソリューション「Customer Engagement Suite」を開発し、グローバルではケロッグ、シティバンク、レッドブルなどでの導入実績がある。
日本においては2019年12月に新たな経営陣が参画し、国内においても本日「Customer Engagement Suite」の提供開始が発表になった。今回のイベントは新経営体制になって、日本市場向けにソリューションを発表する最初の機会となる。
「Customer Engagement Suite」 は成熟化する市場環境に適応した、新しい思想を持つソリューションで、見込顧客の獲得からロイヤル化まですべての機能を内包するという。
イベントでは、その特性の中でも「ロイヤルティ マーケティング」と「ゼロパーティデータ」という2つのキーワードに軸足を置いて、説明がなされた。具体的にはロイヤル顧客をマーケティング活動の資源とするために、顧客行動や属性から新しいマーケティングモデルを見つけ出すこと。また、このモデルを見つけ出すためには顧客データの取得・利活用が必要となるが、最近は個人情報保護が強化される方向にある。
そこでチーターデジタルでは消費者の同意を得、消費者の意図で提供されるゼロパーティデータ活用の重要性を指摘。ゼロパーティデータを取得するための「Customer Engagement Suite」の機能についても紹介があった。
今後、セカンドパーティデータ、サードパーティデータの利用は難しくなることが予測されることから、顧客にとってストレスがなく、また企業への提供に対して等価の価値との交換が前提となる関係づくりが大切であるとの考えが示された。
当日はイベントのために来日した、米国チーターデジタルCEOのサミール・カジ氏、最高製品責任者のビル・イングラム氏が基調講演に登壇した。
サミール・カジ氏は「私たちのお客さまと話をしていると3つの共通するテーマがあると感じていた。ひとつが『リアルタイムのデータマネジメント』で、マーケターは顧客ニーズに即座に対応するためにリアルタイムのデータマネジメントを実現させ、かつ自由にマーケティングに使えるようにしたいと考えている。
2つめが『未知から既知へ』で、マーケターは、対象としている顧客を十分に把握できていないことに課題を感じている。一部のデータを取得している顧客のことしか理解できておらず、実はブランドに対して愛着を持っている身近なロイヤル顧客のことを理解できていないと考えていた。
3つめが『ライフサイクル+ロイヤルティ』で、顧客が親密性を感じるようなパーソナライズしたブランド体験を提供することによってブランドに愛着を持ってもらいたいと考えている」と説明。その上で、これらの課題を解決できるのが、「Customer Engagement Suite」であると語った。
「Customer Engagement Suite」には、以下の機能が含まれるという。
●Cheetah Engagement Data Platform:Customer Engagement Suiteのデータ基盤。顧客プロファイルをリアルタイムに更新する。
●Cheetah Experiences:ゼロパーティデータをはじめとする、マーケティングキャンペーンに必要な情報について、顧客からの承諾を含めた取得を支援。スマホでのスワイプコミュニケーションに対応した、情報を取得するための80を超えるインタラクション手段のライブラリも内包する。
●Cheetah Messaging:さまざまなチャネルでのパーソナライズされたマーケティングキャンペーンの開発・実施を支援する。
●Cheetah Loyalty:ロイヤルティプログラム管理ソリューション。ライフタイムバリューの高い顧客との関係構築と維持をサポートする。
チーターデジタル ジャパンのCMO,バイスプレジデントの加藤希尊氏も登壇。同氏は日本の新経営陣として参画した一人。
加藤氏は「なぜチーターデジタルは日本市場に注力しようと考えたのか。その理由のひとつは、その経済環境にある。日本は人口減少の傾向にあり、経済の縮小も予測される。では、この環境を打破する打ち手とは何か。その答えは、顧客である。顧客を資源としたロイヤルティ経済圏の有効化が必要な打ち手といえる。
そして、この戦略を実現するのが今回、提唱しているゼロパーティデータとロイヤルティ マーケティング。ゼロパーティデータとは顧客からの提供があって、取得できるもの。世界的に個人情報保護を強化する流れにあるなかで、今後は国内においてもサードパーティデータ、セカンドパーティデータの利用は難しくなっていくことから、今後より重要度を増していくと考えている」と話した
新規顧客獲得が困難になる国内市場、トップマーケターたちの戦略とは?
続くゲストマーケター講演では、「新規顧客獲得困難の時代に求められる次世代のマーケティングとは?―ゼロパーティデータ・ロイヤルティ マーケティングが開く世界」をテーマに3名のマーケターがディスカッションを繰り広げた。
登壇したのは、セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 デジタル戦略部 シニアオフィサーの清水健氏、ディノス・セシール CECO(Chief e-Commerce Officer)の石川森生氏、B.MARKETING 取締役の塚本陽一氏の3名。モデレーターはチーターデジタル ジャパンの加藤希尊氏が務めた。
パネルディスカッションでは異なるビジネスモデルの組織に所属する3名のマーケターが、ロイヤルティ マーケティングそしてゼロパーティデータについての自身の考えを提示。
議論の中では、「顧客からゼロパーティデータを提供してもらうためには、等価での価値交換が必要。その価値交換に際して企業が提供するものとしては、これまでクーポンを始めとする経済的なインセンティブが一般的だった。しかし顧客とブランドの間により強固な関係性を築くためには、情緒的なインセンティブを考えていくことが必要。また、その情緒的なインセンティブをつくりだす際には、マーケターのクリエイティビティが重要となる」といった意見。
あるいは「これから、自社にとってのロイヤル顧客の定義をつくっていくべき。ただ、そこで単純に『ロイヤル顧客を増やしたい』という企業都合の発想にもとづいてしまうと、大切な顧客視点が抜け落ちてしまう。顧客の視点に立ち、いかに顧客に役に立てるかを前提とするロイヤル顧客の定義が必要ではないか」といった考えが提示された。
業種を問わず、日本という国の人口動態、経済環境はマーケティング活動に大きな影響を与えていく。ロイヤル顧客にいかに向きあうかというテーマはいま、日本のマーケターが抱える共通する課題といえそうだ。