中学時代の車いす生活から、17歳で起業するまで(ゲスト:谷口怜央)【前編】

高校を休学してITベンチャーにインターンシップへ

谷口:日本に戻らなければならなかったので、戻ってきたんですけど、アフリカのセネガルで自分が何かできることがあるのかと考えたときに何もないなと感じていて。逆に、日本に戻ってきたときに光景が全く違うと思ったんです。

セネガルだと地べたに座ってみんなが楽しそうにごはんを持ち寄ったり、助け合ってたりしていて。僕は名古屋出身なんですけど、名古屋の街中でホームレスの人が普通に座っていて、そこに声をかけるわけでもなく、助けようとするわけでもなく、普通に通り過ぎる人たちを見て、何だこれはと。違和感でしかなかったんですよね。

そこから僕がやれるのはここだと思って、ホームレスの人たちと話すようになって。毎日のように通っていたんですね。高校終わったらそこにいって、また次の日に高校に行って、終わったら行くみたいなことを毎日やってたら、いつの間にかその人たちと仲良くなって、そこから社会復帰していった方もたくさんいらっしゃったんですよ。

澤本:社会復帰の手助けをしていたんですか?

谷口:僕が直接何かをしたというよりは、毎日高校生がひとり、話しかけに来るというのが彼らにとって異常な光景ですし、うれしかったんだと思うんですね。別に僕がこういう仕事をしたらどうですかと言ったわけじゃないですし、毎日話に行っていただけなんですけど、そこから社会復帰された方もたくさんいて。それを続けようとも思っていたんですけど、自分ができることってこんなに身近なことだけなんだっけ? と思うようになったんですね。

僕が変えたいのはチェ・ゲバラがやろうとしたように、世界中だと。今目の前のことだけじゃなく、世界中を変えたいという思いがあったので、こんなことをしていたらダメだと思って、もっと仕組みや影響力が大きいことをやろうと思うようになったんです。

権八:貧困だったり、直接解決する支援策、そういう風に活動していくよりも、もっと大きく、世の中の仕組み、全体を変えていきたいんだと。そのときに何をしようと思ったんですか?

谷口:自分の知識がなさすぎるので、とにかくまずはいろいろな人の話を聞こうと思ったんですね。知ってる仕事も限界があって、もっと世の中を変えるソリューションを探したいと思って、様々な人の話を聞きに行ったんです。だから高校2年生の夏休みを使って、ヒッチハイクで日本一周しました。

様々な人の車に乗せていただいて。アポイントを取って人に会いにいったりもしたんですけど、そこでIT企業やベンチャー企業を経営している人にお会いする機会が多くて。そこでそういうものを初めて知ったんです。パソコンも普段から使ってなかったので。こんなに面白い影響力があって、ビジネスをやってる人たちがいるんだというのが刺激的だったんですね。

自分がやるのはこれだと。IT、スタートアップだと思うようになって。どこか企業で学べないかと、いろいろなインターンシップを探すようになっていきました。それでヒッチハイク中にたまたまインターンシップを募集している企業にお邪魔することがあって、そこで面談をしていただいて、ぜひ来てよということだったので。

ただ普通に高校在学はしていたので、その会社が東京で、高校を辞めるか、休学しないといけないというので、僕は休学を選んで、一度、高2の夏休み明けに上京しました。

権八:休学して、高2の2学期から東京に来て。ひとりで? 東京にマンションを借りて?

谷口:ひとりです。インターン先のオフィスで寝泊まりしていたので、本当にパソコンひとつだけ抱えて東京に来て、そのままそこで生活して。半年ぐらいその会社で学ばせていただきました。

権八:君、凄いね(笑)。その会社はちなみに?

谷口:まだ2、3人ぐらいしかいないスタートアップ企業だったんですが、社長がシリアルアントレプレナー(連続起業家)で、インバウンド向けの、海外から来られる観光客向けの決済サービスとグルメを探すようなサービスを提供している会社でした。その事業について学ぼうというつもりは全然なくて、とにかくビジネスって何なんだ、ITって何だ、というのを知りたかったんですね。

権八:そこで何か掴めるものはあったんですか?

谷口:感覚と言いますか、どういう風に仕事をしているのか。ベンチャー企業と普通の企業は働き方が違うと思うんですね。意思決定のスピードも。僕は会社で働いたことがなかったので、先にベンチャー企業のあり方を学べたのは大きいと思いました。

権八:半年間、インターンをして、そこから名古屋の高校に戻ったんですか?

谷口:戻らなかったです。そのまま自分で事業を立ち上げようと思ったので、インターンは辞めさせていただいて、自分で起業しました。それが2017年6月、高校3年生の6月です。

権八:大学に行こうとは思わなかったの?

谷口:行く気はそもそもなかったですね。起業してしまったので、わざわざ行く必要ないかなと。それもそのとき行く必要がないと思ってるだけで、時間軸的に高校の後、大学、就職である必要はないと思ったんです。高校の後に起業して大学でも別にいいわけじゃないですか。僕はそこの時間軸が違っただけなのかなと思いますね。

権八:しれっと言ってますけど、名古屋の名門の進学校に通われていて。言ってることは全部正論だけど、そううまくいくかなと。なかなかいかないですよね。

澤本:思った通りにちゃんとやれているからね。

権八:そこなんですよ。親御さんも反対せず?

谷口:親は大学に行けって言いました。だからAO入試の準備はしてたんですね。勉強は全然できなかったので、若くして起業して、というストーリーがあればAO入試なら受けられるだろうと。準備はしていたんですが、うやむやにして東京にいました。親からも直接言われることがなかったので、大学は行かず高校も中退して今に至ります。

<END>後編につづく


 

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