「いいものを作ろう」という言葉を疑い、“ほんのちょっと”を大切にする
プロデューサー2年目の井元俊輔氏は、ホットペッパービューティーの「春」や山田健人監督と組んだ水曜日のカンパネラMV「かぐや姫」など、画力が評価される話題作を手がけてきた。井元氏は「つくり手の考えに深く触れたい」と、世界的にも高い評価を得るTOKYO谷川英司監督のもとで1年間、演出視点から映像を学んだ。
そこで、素材を活かすために“ほんのちょっと”を模索する大切さを発見した。「料理でも、焼き加減や調味料を加える手順を“ほんのちょっと”変えるだけで素材の際立ち方に差が出るように、ディテールに意識的であることを大切にしている」という。効率化された定番の制作フローに疑問を持ち、予算・時間の割り当てをゼロから考える。そして、常につくり手目線でいることを忘れない。
また、必要に応じて、異なる世代や業界の価値観・技術をチームに取り入れている。「例えば、ロケ地の発掘はもちろん、異業種アーティストの起用やカフェで女子高生のリアルな会話を盗み聞きしてみたり…。そんな小さな積み重ねがリアリティを生み、映像の重みと新しさにつながっていくと思うんです」。本当にいいものとはなにか、を自問自答し、スタッフが生き生きと力を発揮できるプロデュースを心がけている。そうして生まれた「春」は、ACC賞オンラインフィルム部門シルバー他を受賞している。
井元俊輔氏の仕事
「一緒につくる」という同時代性プロデュース力
潮田龍一氏は現在、プロデューサー歴2年目。これまでにユニクロ「ザ・ゲーム バイ ストリートファイター」やロッテのアイス クーリッシュ「すごい冷たい」篇などを手がけ、さまざまなディレクターと仕事を共にしてきた。潮田氏は一緒に仕事をしたいと思ったディレクターには仕事の依頼に関わらず、まずは直接会話することを心がけている。そうすることで、深い共感と理解に基づいた制作チームづくりを実現してきた。
「実際に会って話をすることで、過去の仕事だけでは分からない、その人らしい一面を知ることができます。『実はこんなCM をつくりたい』『本当はこういう映像が得意』という思いが聞けたらそれを企画や映像、チームづくりに反映させていきます。それはクライアントとの関係でも同じで、直接話せば新しい発見が必ずあります。引き出せた思いを制作物に込められた時は、プロデューサー冥利に尽きますね」。
また、つい社外ばかり見がちのプロデューサー業だが、風通しの良い社内のチームづくりも非常に重要だと語る。
「プロデューサーはミーハーであるべき。日々の会話があれば若い子からどんどん新しい知識がもらえます。私の場合、雑談は少々多めですが、そこから得られるものは意外と大きいです」。
時代の空気を掴み、共感する仲間を集める力が持ち味。チームの日々の様子をアップしているInstagram(#太陽クオリティー)でも仲間づくりに余念がない。
潮田龍一氏の仕事
関わる領域を広げ、受け手の心を動かす
堤麻理子氏がプロデューサーになったのは、いわゆるバズ動画が流行り始めた4年前。動画制作の依頼が増える中で、グラフィック、PR、イベントなど、映像だけでなくプロモーション全体にも目を向けるようになった。
「世の中に出ていく広告という意味では、映像もグラフィックもPR も同じ傘の下にあるもの。受け手のことを考えて、自分の専門領域でなくとも積極的に関わろうというスタンスで取り組んできました。また、業界で話題になった広告を周りの友人は知らないことも多い。世間一般の感覚で見た時に、『すごい』『面白い』『考えさせられる』など、感情を動かし記憶に残るものになっているか自分が納得するまで考えるようにしています」。
新しい取り組みを後押ししてくれる自由な社風のもと、自然な形で自分の領域を広げてきた堤氏。
どんなジャンルの表現でも常に受け手の心に届けることを考え続けていたら、おのずと関わる仕事の幅が拡がっていった。
「会社にはさまざまなタイプの表現のプロが揃い、実働としても志についても支えてくれる人たちが多くいます。新しい試みもしやすい環境にあるので、後輩のためにもプロデューサーという仕事の幅の広さや可能性を示していけたら、と思っています」。
同じ肩書きでも、アプローチは三者三様。業界プロデューサーの職域を拡張していく映像制作会社の進化がますます期待される。
堤麻理子氏の仕事
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