複数のクラウドサービスで中小企業の業務効率化に貢献してきたラクス。サービス範囲を拡大し成長し続ける同社に、マーケティングに対する考え方やマーケターの人材戦略について聞いた。
ターゲットの捉え方を変え、リード獲得数が2倍に!
—ラクスの事業概要や最近のマーケティング活動の動向について教えてください。
本松:ラクスは、経費精算システムの「楽楽精算」やWeb帳票発行システムの「楽楽明細」など、中小企業の業務効率化を推進するクラウドサービスを複数提供しています。ラクスの強みは、1サービスのみに依存することなく、十分に収支が取れているサービスが10以上あること。現在も、新たに勤怠などの総務人事系サービスの開発を行っており、順調に事業領域を拡大しています。
—滝藤賢一さん、横澤夏子さんが出演する「楽楽精算」のテレビCMシリーズ最新作は、特に新規リードの獲得につながっているそうですね。その企画のポイントや反響についてお聞かせください。
本松:テレビCMでは、経理の方に向けてサービスの認知度を上げるとともに、業務上の悩みに共感してもらうことで、サービス利用への興味喚起につなげたいと考えています。
「楽楽精算」のCMを放映する以前には、私たちはテレビCMを出稿した経験がありませんでした。しかし地方での出稿量の小さなテストから始め、結果をもとに改善を重ねることで、テレビCMにおける問い合わせ数において、過去最高の成果をあげることができました。
実は11月に公開し、2020年1月下旬~2月上旬にも放送中のCMでは、ターゲットに対する考え方をこれまでと変え、クリエイティブを大幅に見直しました。CMによる新規リードの獲得件数が減少傾向にあったためです。以前のクリエイティブの調査で、対象となる経理の方々の共感が弱いことがわかっていました。経理の方に認知はされてもあまり刺さっていないのではという仮説を立て、もっと経理のみなさまに共感していただけるようなクリエイティブにしようと企画したのが今回のCMでした。
—具体的に、どのような点を見直したのでしょうか。
本松:これまでは、定量調査や既存のお客さまへのアンケートなどからペルソナをつくり、広く経理の方に刺さることを目指してきました。しかし、その手法では、たしかに多くの経理の方に少しずつ刺さってはいても、深く刺さるものにはなっていなかった。そこで、実際に「楽楽精算」を選んでいただいているお客さまや、逆に「楽楽精算」を選んでいただけなかったお客さま、一人ひとりにインタビューをして経費精算業務の“痛み”を具体的に抽出。その結果をCMのクリエイティブに落とし込んだのです。
テーマを絞ったぶん、大外れする可能性もあり、チャレンジではありました。ただ、経費精算業務の痛みをうまく言語化されていない方に対しても、ほかの方のインタビューから抽出した“痛み”をぶつけてみると、同じ部分に深い痛みを感じていることが確認できたことから、勝算を見出したのです。結果、CM放映後、同期間の新規リード獲得数が1.5~2倍という成果を得ることができました。
ゼロからの立ち上げで失敗と改善を重ね、4度目のチャレンジへ
—テレビCMでは細かくユーザーインタビューを行いながら、PDCAを回して成果を上げられたのですね。そのほか、テレビCMのようにマーケティング活動におけるチャレンジがあればお聞かせください。
本松:自社カンファレンスである「RAKUS Cloud Forum」を、これまでに3回開催しています。投資に対して数値的な成果ではまだ十分な回収ができていないという現状があるものの、回を重ねるごとに新たな気づきが得られており、試行錯誤しながらも改善につなげることができています。
1回目はゼロからのチャレンジということで小規模で開催し、一定の成果が得られたため、2回目は規模を拡大しました。しかし、拡大した規模に見合うだけの成果は得られませんでした。なぜうまくいかなかったのか。ひとつは、来場者の方に対する動線などの設計が悪く、私たちのサービスを理解していただけるような体験を提供できていなかったのではないかと考えました。
そこで3回目は、「楽楽精算」のブースを複数箇所に設けてサービスを見ていただけるようにし、パートナー企業にもご参加いただいて、「楽楽精算」をいろいろなサービスと組み合わせて使っていただけるイメージも持ってもらえるよう工夫しました。
もうひとつ、積極的に会場に来たいと思ってもらえるようなワクワク感も欠けていたのではとも考え、飲食ブースや昭和時代の経費精算業務を体験できるブースなども用意しました。
こういった自社カンファレンスのノウハウは体系化されたものがなく、成功事例も多くありません。そこで今期は、私たちのサービスと同じSaaS業界のトップ企業であるセールスフォース・ドットコムさんがサンフランシスコで開催している自社カンファレンス「Dreamforce」に6名が会社負担で参加し、学べる機会をつくりました。この経験も、4回目となる次回の開催に生かしたいと考えています。
一人ひとりが裁量を持ち、潤沢な予算で新たな施策に挑戦できる
—イベントからCMまで様々な新しいチャレンジをされていますが、ラクスだからこそ経験できるマーケティング職の魅力とはなんでしょうか。
本松:マーケティングとは本来、商品の企画から顧客がサービスを使いこなすところまで、すべてを俯瞰したうえで施策を打つべきというのが当社の考えです。そこで当社のマーケティング担当者は、プロモーション領域だけを見るのではなく、マーケティング視点から商品開発に意見をしたり、営業活動からヒントを得て施策に生かしたりと、商品開発や営業、カスタマーサクセスの担当者とも連携を取りながら仕事を行います。
プロモーション内容も、デジタル媒体からマス媒体、展示会や自社セミナーといったオフライン系まで幅広くあり、テレビCMであればテレビCMの主担当が、広告会社の選定から企画の立案、収録の立ち合い、効果測定など一連の業務を行います。加えて、一人ひとりが常に新しい媒体に挑戦しており、自分で提案して実施に至った媒体は、計画から実施、効果測定までをすべて主担当として完遂します。
さらに、私が統括するBOクラウド事業本部は、ラクスの成長を引っ張る部門です。会社全体が前年比130%の成長を目指すのであれば、私たちはそれを大きく超える成長をしなければならない。使えるプロモーション予算は年々増えているので、より大きな予算を動かして売上を伸ばしていくことにチャレンジできる環境です。一人ひとりが自分をアップデートし、さらに新しいことができるようになるために、積極的な学びを推奨していますし、その機会や手段も提供しています。
—潤沢な予算で大胆な施策が打てるというのはマーケターにとって魅力的である一方、大きなリスクも伴います。どのように挑戦を後押しされているのでしょうか。
本松:当社は挑戦を是とする文化で、失敗に対して責任を追及することはしません。成功の裏には健全な失敗があるからです。成功でも失敗でも、得られた結果に対してさらにPDCAを回し、次の成功に近づけようとする人を評価しています。
「RAKUS Cloud Forum」も改善を行いながら、4回目の開催を準備しているように、きちんとPDCAを回すことで、セカンドチャンス、サードチャンスが与えられます。また、私を含めた上位のマネージャーが、仮説立案から施策のプランニング、振り返りまでサポートすることも、挑戦の後押しになっているのではないでしょうか。
—最後に、本松さんが考える、マーケティングの仕事の展望やラクスの未来についてお聞かせください。
本松:プロモーション手法にとらわれるのではなく、ターゲットとなるお客さまに対する深い見識を持ち、商品開発からカスタマーサクセスまで、サービスのライフサイクル全体に目を配らせたうえで、最高のプロモーション効果が出せるような経営視点を持ったマーケターが生き残っていくと考えています。言ってみれば、一人ひとりが担当サービスのCMOとしての視点を持ってほしいのです。私自身も、事業責任者でありながら、ラクスにおいてはいちばんのマーケターでありたいと思っています。
ラクスは市場に求められるサービスをゼロからつくって収益化するノウハウを持ち、現在も新しい事業を継続的に生み出しています。これまでも中小企業の業務改善を広くお手伝いしてきましたが、まだまだ支援できていない領域があります。さらに多くのお客さま、より広い業務領域に対して業務改善のお手伝いができるよう、大きな成長を目指したいと考えています。
お問い合わせ
株式会社ラクス
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-11 アグリスクエア新宿
採用に関する詳細はこちらでご確認いただけます。