【前回コラム】「企業の新型肺炎対策、まだまだ不安要素は一杯! 特に致死率より『感染率』に留意!」はこちら
感染が止まらない中国、孤立化進む
中国では、春節で団体旅行は渡航禁止となったものの、個人旅行で約500万人が出国したとされている。そして春節が明け、徐々に帰国の途に着き始めたことで、さらに今回の感染症のステージが変わる可能性がある。新型肺炎は人の移動とともに拡散を続け、現在、中国全土はもとより27の国に感染は拡大した。
既に、30を超える航空会社が中国本土での発着を休止し、事態の鎮圧に対して様子を見ている状況だが、感染はむしろ広がりを見せており、収まる気配はない。このまま感染が続けば、ウイルスの性質自体が変わる可能性もあり、注意が必要となる。
【表1】新型肺炎に関する中国の公式発表
ついにSARSを超えた!
本日(2月3日)付で、SARS(重症急性呼吸器症候群)の死亡者を超えた。一方、中国政府や武漢、その他の地域からの情報をメディアが多く取り上げ始めており、それらをまとめると以下のようになる。
● これまでに感染した人のうち、4分の1は重症になったものの、ほとんどの人の症状は比較的軽い。
● これまでに死亡した人のほとんどには、高血圧や糖尿病、心臓や血管の病気といった、免疫を低下させるような持病があった。
● 致死率は3~4%程度と考えられているが、感染の拡大はまだ続いていて、正確な致死率やどれぐらい重症化しやすいかなどはよくわかっていない。
● 中国からの報告として、武漢ではヒトからヒトに次々に感染して、「4次感染」が起きている。
● 一度、治療を受けて改善した人も、再度感染する可能性がある。
● 不顕性感染者(陽性でも一切症状が出ない感染者)が存在し、無症状でも人に感染させる危険性がある。
多くの大学、研究機関が新型肺炎の感染力について2〜5(感染者1人が2〜5人に感染させる、という意味)との推定値を出しているが、武漢市(1100万人)で4次感染まで進む中、中国政府が公表してきた感染者数は極めて限定的と言わざるを得ない。さらに、不顕性感染者の存在は日本国内の調査によって判明したが、日本以外での症例は聞こえて来ないため、気がついていない国も多くあるだろう。
香港大が感染者の推定値として約7万6000人と発表
香港大の研究チームが、中国当局の集計結果を使用せず、1月28日までに武漢からタイや日本、米国、フランスなどの外国に移動し、移動先で確認された感染者数に基づき推定したもので、1月25日時点で感染者は7万5815人に上る可能性があると発表した。
この算出には、1人の感染者からうつる人数:2.68人、感染者が2倍に増えるのにかかる日数:6.4日が使用された。この数値は衝撃的で、どこまで信頼すべきものか不明ではあるが、現実に武漢では病院で診断すら受けられない感染者と推定される人が数万人規模いるとの情報もあり、一概に否定できない。
中国では、武漢での1次封じ込め策に失敗し、全土に感染は広がり周辺国との孤立化が進んだが、まさに日本国内では進行中の水際対策による封じ込めで来週にも成否が決まろうとしている。
厚生労働省は、濃厚接触者を特定し監視下に置くなど手を尽くしているが、想定外の感染者を予見するしくみではなく、新たな感染経路の発現やスーパースプレッダー(多くの人に感染を拡げる感染者)の登場による深刻な感染拡大が発生しないとは言い切れない。企業は、今後2月中旬ごろの政府の動向を注視し、事業継続等を含めた対策を検討する必要がある。