世界の広告・マーケティング界の最先端を行き、新しい概念や手法が生み出される米国。宣伝会議「Business Creation Lab. 2019 in New York」は、米国広告界の最新トレンドを概観するレクチャーからスタートした。講師を務めたのは、デジタルインテリジェンス ニューヨークオフィス代表の榮枝洋文氏。6日間にわたる現地企業の視察から、実務に役立つヒントをより多く得られるよう、前提となる業界全体の動向を5つの話題から解説した。本稿では、2020年の予測も含め、アップデートした内容を紹介する。
次の5つの話題は、一見すると別の事象に見えるが、そこには共通項がある。それは、「データ」と「コンテンツ」が「ダイレクトに」企業と顧客の間でつながり、さらにその規模が拡大を続けていること。これからのビジネスで無視できない、この構造の本質を紐解く。
1.CCPA/GDPR 新プライバシーの概念
今年のCESでもAppleがプライバシーのテーマで登壇したり、GoogleのChromeがサードパーティーCookieを廃止する方向を示したりと、個人のデータに関する概念が180度転換し始めた。カリフォルニア州のCCPAや欧州のGDPRの概念は、世界の全ての企業が規制に対して受け身ではなく「能動的に」動く必要がある。日本からでは見えにくい「先手」の部分だ。
2.Apple Card
2019年8月に世界に先駆けて米国で発行された「Apple Card」。スタイリッシュなその見た目だけではなく、Appleの真価はファーストパーティーデータ、みなしの同意ではなくユーザーとの相互信用関係の構築にある。その簡易な使用方法とAppleの絶対的ともいえる信頼性により、GoogleやAmazonとの対比が浮き彫りになる。
3.DNVB(Digitally Native Vertical Brand)=サブスク2.0
分野によっては、既存ブランドがD2Cブランドの成長により、シェアを奪われている。これはサブスクリプションモデルの成長ではなく、社会の変化に応じた会員モデル、都度課金モデルなど、顧客との関係パイプのつくり方が多様化しているからだ。米国ではすでにサブスクも一周して「2.0」のステージに突入した。
4.Amazon GO
「Amazon Go」の新しさは無人店舗で買い物ができることではない。省力化の側面ではなく、「生体認証データの取得」と解釈できる。究極の個人情報であるこのデータをAmazonが取得し、活用し始めている。リアルとデジタルが一体化していく動きは日本でも見受けられるが、AmazonやWalmartなどにおいては、リアル店舗の向こう側にカギが潜むことがわかる。
5.エージェンシーとコンサルのアプローチ戦略
マーケティングの4Pでいうプロダクトからビジネス創出をアプローチするコンサルティングと、プロモーションからアプローチするエージェンシー。プロダクトごとにパイプ・ストロー的に顧客とつながり、拡大するスタートアップ。これらの構造を理解し、これからのエージェンシーが切り開く戦略として「成果報酬モデル」を考える必要がある。
2020年度の本視察研修は10月4日(日)から10月11日(日)に開催予定です。最新情報は、Webサイト、またはメール(global-educ@sendenkaigi.co.jp)までお問い合わせください。