「手は口ほどに物を言う」
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絵コンテ
自分の体験を基にしたストーリー
人差し指でピアノを弾く小さな女の子の手。そんな彼女も成長し、大学に進学、会社に就職、結婚し子どもにも恵まれた。幸せな日々を過ごしていたが、やっぱりピアノが好き。音楽の仕事を始めようと、一歩踏み出す—。
この企画を手掛けたのは、フォトグラファーの菅野桂子さん。スチールの仕事が中心で、自分で映像を企画するのは今回が初めてだ。「普段はラフイメージの構図を基に、アングルやライティングを考え、表現することが多いです。自分でストーリーを考え、その流れに合わせて映像を撮り、カットを繋いでいくという感覚は初めての体験でした」。
オリエンテーションで伝えられたテーマは、リクルートのミッション・ステートメントである“FOLLOW YOUR HEART”。直訳すれば、「あなたの心に従おう」となる。
菅野さんは、「このテーマを聞いたとき、自分がこれまでやってきたことが“FOLLOW YOUR HEART”に近いのではと思いました。正直、大学時代までは何となく周囲に流されて生きていました。ただ、当時通っていた福祉大学の実習が終わったタイミングでふと、『多くの人の人生にそこまで責任を負えるのか?本当にやりたいことは何だろうか?』と自問自答しました。そこで写真家を目指すことを決めて、今に至ります。この実体験を基に“FOLLOW YOUR HEART”を表現しようと考えました」と話す。
手にはその人の人生があらわれる
そして、今回の映像でフォーカスしたのは、音楽が大好きな ひとりの女性の手だ。
ピアノを弾く、結婚指輪をつける、子供の手をにぎる、スマートフォンで転職を伝えるメッセージを送る。年を重ねるとともに変化していく手の大きさや動きを通して、悩みながらも夢に向かって、自分の気持ちに素直に生きる女性の姿を描いた。一方で、手にフォーカスを当てることで苦労もあったという。見せたいのはスマートフォンの画面の文字だが、手も写さないといけない。手と見せたいものの両方を画面に収めるために試行錯誤した。
「手に焦点を当て、物語を繰り広げることで、手の細かな動きまでしっかりと見ようとするんじゃないかと。それに、手には時の移り変わりも表れます。年齢やその人の仕事によって変化する、そういうひとりの女性の人生の歩みも表現できると思いました」。
演出では特に、映像のトーンにこだわったと菅野さん。「主役の女性のそのときの心情を意識して映像の明るさを決めていきました。指輪のシーンや音楽の仕事を始めるシーンは、明るく未来を感じる雰囲気に、悩んでいるシーンは少し暗めにしています」。
また、妊娠中のお腹の膨らみ具合の調整やハンバーグを手づくりするなど細部までこだわり、リアルなひとりの女性の生活を表現した。
「自分で企画し、完成まで仕上げるというのは、初めての経験で苦労もありましたが、大勢の人と一緒にひとつの映像をつくるというとても貴重な体験ができました。家事や育児も頑張るし自分のやりたいことにも挑戦する。そんな女性をあたたかく見守るような映像に仕上がったと思います。この映像を見た人の気持ちが少しでも前向きになり、自分のやりたいことに挑戦しようと感じてくれれば嬉しいです」。
- 企画制作
- UN+アマナデジタルイメージング+アマナデザイン+Heima
- 企画+撮影+演出
- 菅野桂子
- 企画
- 大滝洋平
- PR
- 桑原陽、岩本菫花
- PM
- 井本悠貴、榊原万琴
- 撮影助手
- 永尾優実、重宗卓、本永創太
- 音楽
- 佐藤教之、佐藤牧子/dd>
過去作品
菅野桂子(かんの・けいこ)フォトグラファー。
1986 年福島県に生まれる。2011 年 日本写真芸術専門学校卒業後、ヴィーダ入社。現在は、アンに所属。Instagram:@keikokanno_