01 満足したブランドと不満だったブランド 設定していたKPIに違いも
回答した27ブランド中、「ポップアップストアを実施したことがある」としたブランドは12。これらを対象に、ポップアップストア実施時に設定したKPI(主要業績評価指数)を複数回答で尋ねた。
トップ3は、「実施中の売り上げ」(8ブランド)、「来店人数」(6ブランド)、「実施後の販売の伸び」(4ブランド)となった。補足として、各ブランドが設定したKPIに対する満足度を尋ねたところ、「満足(満足した+おおむね満足した)」「不満(あまり満足できなかった+不満だった)」の回答者で、設けていたKPIに差があることがわかった。
「満足」したブランドは「来店人数」や「Webメディアに取り上げられた数」をKPIとしていた。他方、「不満」ブランドは「SNSにおけるリーチ数」や「テレビに取り上げられた数」で上回った。
02 PRやセールス、リサーチなど多様な期待 ほとんどのブランドが「再度実施」
ポップアップストア実施経験のある12ブランドに対し、期待した効果について複数回答で尋ねた。最多は「PRや話題づくり」。同時に、「新規客獲得」や「販売実績づくり」「消費者の反応を調べる」が選ばれた。
これらに対し「おおむね満足」は7、「あまり満足できなかった」は3、「不満だった」は2となった。また「再びポップアップストアを実施する意向」について、「ある」が10ブランド、「ない」が2ブランドだった。再度実施する場合の改善点は「事前の話題づくり」が最多。
「最近は企業間コラボのポップアップストアも散見されます。異なる業種が手を携えれば、各社に関連するメディアでの露出が生まれ、PR効果が最大化します。施策はどんどん進化しています。目的に合わせて柔軟に企画できることがポップアップストアの魅力だと思います」(石阪氏)
03 次回改善点は「事前告知」の強化 20ブランドが実施意向
右のグラフは、ポップアップストア実施経験のあるなしによらず、今後の実施意向を尋ねた設問への回答結果。
すでに「実施予定あり」としたのは5ブランド、「予定はないが実施したいと考えている」というブランドも15あった。また、前段の質問で「事前告知やPR、話題づくり」以外に挙がったのは、「KPIの見直し」や「分析、検証によるPDCAの徹底」。
「KPIには、体験人数をどれくらい伸ばすか、という視点もありますが、一方で、あえて体験人数を限定して、少数のお客さまに高品質なサービスを提供するという手法も目立ちます。数量は限定されるものの、良質な意見がSNS上に拡散し、動員に貢献することもあります。」(石阪氏)
04 イベントにかける予算は増加傾向 Webへの注力と二極化か
イベントの最大の強みは「実体験」にある。消費者に直接、商品やサービスの質感やたたずまいなどを伝えられるのはもちろん、メディア向けでも、正確な理解による報道が期待できる。
「消費者向けイベント」「メディア向け」「ポップアップストア」の3つの予算方針では、いずれも増やす意向が見て取れる。「5Gの普及によってイベント企画の可能性が広がれば、さらに体験の重要性は高まるのではないでしょうか」(石阪氏)。
一方、いわゆる4マスメディアはラジオと新聞、次いで雑誌、テレビにおいて8~10ブランドが「減らす」と回答。また、Webは、7ブランドが「大幅に増やしたい」、14ブランドが「増やしたい」とした。「マス予算をポップアップストアなどに移行するケースは増えています。事前告知にWeb広告を活用するなど、Webとイベントは相互補完的です」(石阪氏)
05 ポップアップストアの予算感 実施に要する費用とのギャップ
「広告施策の注力分野」では、27ブランド中21が「新規顧客の獲得を重視」と回答。では、ポップアップストア自体の予算感はどれくらいなのか。大勢は「3000万円未満」で22ブランドだった。
予算については、集客を順調に伸ばすべく、土曜日、日曜日が少なくとも2回は入る9日間はほしい。これに施工や、撤収にかかる期間を合わせた賃料と、人件費というのがおおよその計算式だ。
「昨今は、不動産会社のポップアップストアに対する理解が進んできました。結果、不動産物件の流動性が高まり、使用できる場所の選択肢が増えています。必ずしも予算が多ければよいわけではなく、むしろ私たちがどんな場所を使えるか、そこでどんなアイデアを実現できるか、が問われていると認識しています」(石阪氏)
ポップアップストアは新規客をロイヤル顧客に育てる入り口
今週の調査を通じ、ポップアップストアには、新規顧客獲得のための「宣伝」「セールス」「リサーチ」といったマーケティング施策を同時に行える、という期待感が見て取れた。
電通ライブの石阪太郎・執行役員は、「同じ新規顧客の獲得目的でも、ポップアップストアは、ロイヤルカスタマー育成につながる可能性が高い」と語る。
「わざわざストアを訪れ、10分~20分ほど滞在し、ブランドの世界観ごと商品を体験していただける。場合によっては商品購入にも至るでしょう。さらにはLINEを通じて継続的にアプローチすることも可能です。『お金を払うほどの共感を得る』ことは、見た目以上に強力なつながりだと思います。ポップアップストアでの素敵な体験は、そういうところまで到達できる可能性を秘めているのです」(石阪氏)
「たとえばポップアップストアには、商品を購入した方にとって、『あの日、生まれて初めて買った、このブランド』という存在になる側面もあります」と、言葉をつなぐのは、電通ライブの関口真一郎氏だ。
「ディスカウントなどで安く買う購入体験では感じられない価値を提供できるのがポップアップストアです。イメージ訴求から一歩踏み込み、ここだけの体験を通じて『正規品を定価』で購入いただくからこそ、『ブランドの仲間になった』という感覚が得られる。そして、今後、同ブランドを常に選択してくれる『ロイヤルカスタマー』につながるのです」(関口氏)体験企画を通じ、SNS投稿やアプリ加入を促す施策も盛んに行われている。「ただ、それが本当に来場者に有効で求められていることなのか。我々には体験を通じて本当のファンを集める、見つける、育てるアイデアが求められているのです」(関口氏)
プロモーションのコア施策として、そしてロイヤルカスタマー育成の効果的な手法として活用されてきたポップアップストアだが、その進化はまだまだ続くようだ。
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