こんな時代だからこそ、志のある映像をつくる
「CONNECTION LAB」には、カルビー、マキタ、レノボという事業会社3社が参画。CONNECTIONのディレクター陣は、これから各企業の商品あるいはブランドの映像制作に取り組む。この流れだけを聞くと、通常のCM制作のように聞こえてしまうだろう。
しかし、このラボでは、アウトプットに至るまでのプロセスが通常とは異なる。ディレクター陣は、まず企業担当者から直接オリエンを受ける。そして、そこで出てきた課題やブランドについて、企業担当者、ディレクター全員でブレストする。そこで出てきたワードやイメージを受けて、ディレクター陣は各々企画を考え、各企業に自らプレゼンをする。こんな流れで映像制作が進んでいる。
こうした取り組みを始めた背景を、同社映像ディレクターのひとり、柿本ケンサクさんは次のように話す。
「CONNECTIONに所属する映像ディレクター、カメラマン、エディターはそれぞれ個性が強く、価値観や手法も異なる。そんなメンバーが集まって1年経って感じたのは、CONNECTIONはバラバラな個の集団だけどでも、クリエイターが互いに刺激をしあい、時にはコラボレーションしたりして、カオスのような場になりつつある。そんなカオスな中から生まれるエネルギーがあるということ。そのメンバーとこの場所からつくることができる、新たなクリエイティブがあるのではないかと思ったんです」。
CONNECTION設立のために柿本さんが動き始めた2年前あたりから、CMやMV以外に「動画」「コンテンツ」と呼ばれる映像が多くつくられるようになり、いまや映像の出口となるメディアも多岐に渡っている。また映像のプロでなくても、簡単に動画をつくる手段を得ることができる。
「世の中にあるさまざまな動画を否定するわけではありません。動画は、これから目的や用途に応じて使い分けられる時代になっていくと思います。誰もが簡単に動画をつくれる時代だからこそ、その世界の中で“動画”と呼ばれているものとは一線を画したものづくりをしたいと考えています」と、柿本さん。今回のラボを始めた想いを、次のように話す。
「僕らは広告会社ではないのでマーケティングもできないし、クリエイティブ全般に長けているわけではない。さらに言えば、いまは従来の広告よりもSNSでの個人の発言がものや人を動かす時代。SNSには無数の映像が流れているわけで、その勢いは今後ますます加速するはずです。
その流れの中で僕らは何もせずに、これまで通りでいいのだろうか。いつかそういう映像に世の中が席巻される前に、自分たちで新しいことをやるべきではないか。クオリティを上げることはもちろん、見た人が情熱を感じたり、興奮したり、何かを考えるきっかけを与えるような、志のある映像をつくっていかなくてはいけないと思ったんです。
とはいえ僕らができるのは、映像という観点、立場から企画を考え、実現していくこと。CONNECTIONのメンバーは映像をつくる際に何よりもストーリーテリングを大事にしています。僕らに求められたことに対しては、そういうものを大事にした上できちんと応えていきたい。それを企業の皆さんと一緒にゼロから考えることができたら、これまでにない新しいものが生まれるのではないかと思いました」。
企業と一緒にゼロから考える映像づくり。それは最終的に広告のようなものになるのか、MVのようなものになるのか、それ以外の全く違うものになるのか、まだわからない。
「広告という看板を掲げてしまうと、ターゲットを意識して絞り込んだ表現になってしまう。そういう肩の荷を下ろしてもらって、いつもとは違うもっと自由なものづくりを一緒にできたら」。
そう考えた柿本さんはCONNECTIONのメンバーにラボのアイデアを伝え、「参加してもらえないか」と呼びかけた。すると、ほとんどの人が「やりたい」と手を挙げてくれたという。スケジュールの関係で参加できなかった人もいるが、今回柿本さんを含め、5人のディレクターが参加している。
CONNECTION LAB
ブランドの持つ「理念」や「DNA」を「映像」という手法を用いて、「いかに強い伝達力をもって、伝えていくことができるか」に挑戦するラボ。ブランド・企業とクリエイターが膝と膝を突き合わせ、単に、コミュニケーションのアイデアに留まらず、事業全体までも含め、互いに理解・意見を交わす。そうした「場」を通じて、世の中に強い伝達力を持ったブランテッドコンテンツを発信していく。
ディレクターにとっても企業にとっても学びの場になる
「通常、企業の方と広告会社のクリエイティブの方が話をし、企画を出した後、ディレクターは依頼を受けることがほとんどなので、これまでは最後の部分にしか関われないことがほとんどでした。でも、最初の企画段階から一緒に考えさせてもらうことができたら、技術面でも表現面でも映像にプラスになるアイデアを出すことができるので、最終的な仕上がりが変わると思います」と、柿本さん。
同社代表ティモさんは「この取り組みは、僕らにとって、新しいクリエイティブのチャレンジなんです」と話す。「これは僕らにとっても、企業の方にとっても新しい試み。どんな化学反応が起こるのか、やってみないことには正直どうなるかわからない。お互いにとって学びの場でもあると考えています。参加しているメンバーもレギュラーの仕事があるので、決して潤沢に時間があるわけではありません。それでも新しいことを学びたい、それが自分の成長につながり、いつか財産になると思っているからこそ、このラボに参加しているんです」。
柿本さんは映像をディレクションするとき、見た人の心に残り、動かす、映像をつくることを心がけているという。
「目に見たもの、聴いたものをそのまま映像にしても、面白いものにはならない。伝えたいことの本質、それは目に見えないことが多い。目に見えない世界をビジュアル化する。その表現に挑戦しなければ、人の心に残る映像にはならない。それは理屈ではなく、非常に感覚的な話です。その感覚的な表現範囲だからこそ、僕たちだからこそチャレンジしがいがある。いま進めているラボでも、企業の皆さんと一緒に情熱を注いで、見た人の心に残る映像をつくっていきたいと思っています」。
CONNECTIONと3社が制作した映像は4月以降に公開予定だ。
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