“遅咲き女優”という意識はなかった(ゲスト:桜井ユキ)【前編】

オーディションさえ受けさせてもらえなかった下積み時代

中村:女優になるために何かしら努力されてきたことってありますか。小さいころに何かに通ったとか。

桜井:まったくなくて。だからその足でよく東京に来たねって自分でも思います。お芝居を始めたのが上京してきた21、22歳とかなので、それまではたまにドラマを見て、たまに映画を見てっていうぐらいでした。だから稽古始めたての時に、「ひどすぎる」って先生に言われたりとか。

中村:通っていた稽古場の先生に「ひどすぎる」って言われたの?

桜井:言われました。「何をしてるの?」って。

中村:大根役者だったっていうことなの?

桜井:大根にもなれないぐらいの。ひどかったんだと思います。それを見た当時のマネージャーさんが静かに扉を閉めて去っていった(笑)。

澤本権八中村:爆笑

桜井:その後マネージャーさんに「僕がいいと言うまで、あなたにはオーディションを受けさせません」って言われたんですよ。私からしたら「なんだよ」っていうのがあったんですけど、もうそれぐらいひどかったんです。

中村:それじゃあいいよと言われるまで特訓したってこと?

桜井:通っていた先生のところに毎日稽古に行けたので、そこでまあ、基礎の基礎とか。それこそ発声法とかを教えていただいて。その先生がやっていた小さい舞台に出演させていただいて、そこでちょっとずつ学んでいきました。

中村:最初に出たのは演劇っていうことですか?

桜井:そうなんですよ。お芝居、舞台の基礎をまず教えていただいて。その後、別ものというわけではないんですけど、映像の方をやらせていただいたという感じです。

中村:桜井さんって世の中的にも、例えば検索すると“遅咲き”っていわれるじゃないですか。あれはどう思うんですか?

桜井:やー、面白いなと思って。「ただ単にスタートが遅いだけなのにな」と。長く小さいころから芸能活動されていて、その結果が出たのが年齢を重ねてからだと遅咲きになると思うんですけど。「私スタート遅かったし」っていう風に自分でツッコミをいれてるんですけど(笑)。

中村:なんかあれですよね。私Web野郎なんで、ウィキペディアで調べたことによると、一回ご実家に戻って、また復活上京しているんですよね。

桜井:はい、そうです。

中村:23歳?

桜井:そうですね。

中村:そこは一回上京してから、「この大根がー……」みたいなことがあって。

桜井:その大根呼ばわりされたのは再び上京してからですね(笑)。

澤本:そうなんだ(笑)。復活後に。

中村:せっかく頑張って復活したのに。

桜井:最初に出てきて事務所の方にお会いしたのが19歳くらいの時だったんですけど。実際暮らし始めてみて、東京で生活なんてできないと思って。まあまあすぐ帰ったんですよ。なので1回目の上京の時はたいして滞在もしていなかったというか、お仕事もしてないですし。

中村:でもその後に「やっぱり私やる」と。

桜井:そうですね。というか、その時の私は上京とか、お芝居っていうのをやってなきゃいけないなっていうことを結構痛感していて。23、24歳ぐらいの年齢でいかないとチャンスもないと思ってましたし。今かなってところで出てきたのがその歳だったんです。

澤本:女優になる人って何かしらずっと可愛いとか、綺麗って言われてきている人が多いじゃないですか。

桜井:私の幼少期はわりと暗黒期でした。それは別に周りの環境がっていうよりも自分の心の中っていうか、すごく暗かったんですよ。子どもの頃の私。だからなぜあの暗さを持って表に出ようとしていたのかが自分でも謎で。結構解明不可能なところがあって。可愛いねとか言われることもなく、割と人と接するのも得意じゃなかったです。

権八:暗い時代っていうのはいつまで続いたんですか?

桜井:高校あたりまでですかね。高校ぐらいで、ようやくちょっと楽しいかなって思いだしたんですけど、ちょっと突き落とされるような出来事もあったりして。「なんだよ!」って思いながら成長していました。年を重ねて今の方が、人と接するのって素敵だなって思うことは増えましたね。

中村:あの、差し支えなかったら突き落とされるような出来事っていうのを教えていただけますか?

権八:そうですよね。

中村:全員気になっている。日本中が。

桜井:短くさらっと説明すると、やっぱりその年代ならではというか。16~18の年齢って特に女性同士ってすごく難しい時期じゃないですか。お友達付き合いしかり、同性ならではの付き合い方っていうもののえぐみが如実に出てた時期なので。

中村:まあね。女性は特にね。

桜井:はい。そういうものに結構自分的にも巻き込まれていたり、環境がそうだったりっていう部分で悩んでいた時期ではあって。

権八:なんかこういうこと言ったらあれですけど、友達との関係でそう思っていたとしてもですよ。お顔が暗くないじゃないですか(笑)。見た目がやっぱ派手っていうか。

桜井:そうですね(笑)。

権八:お美しい。男子が放っておかないというか。

中村:まあ80回ぐらい校舎の裏側に呼び出されたことがあるだろうね。

権八:そういうことになります。

桜井:いやいやいや、ないです。なんか同性の後輩とかに私よくラブレターもらってたり。

権八:それも分かるわ。すごい分かる。

桜井:私中学生の時から同性の年下によくお手紙をいただいてたんですよ。たぶん男性よりも女性の方が多かったかもしれない。

中村:かっこいいからね。

権八:凛々しさもあるからですかね。

桜井:なんですかね。いや、でも嬉しかったですけどね。

澤本:なんか外国人のロックミュージシャンにいそうじゃん。デヴィッド・ボウイとかさ。

権八:似てるかな(笑)。似てないと思うけど。

桜井:本当ですか。

澤本:いやなんか印象として。

桜井:ちょっと特に今日の格好がね。ロックミュージシャンっぽいですかね。

次ページ 「『マチネの終わりに』での役づくりに迫る」へ続く

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