ネスレ日本は3月10日、都内で2020年春の事業戦略発表会を開催。高岡浩三社長兼CEOが登壇し、退任後は「個人として企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に取り組む」とコメントした。4月1日付で社長兼CEOに就任する深谷龍彦氏(現常務執行役員飲料事業本部長)からは事業戦略の発表とともに、新トップとして今後の方針が語られた。
なお、当日は新型コロナウイルスの影響から、オンライン中継のみの実施で40人超の報道関係者らが参加した。新型コロナウイルスによる業績への影響については「現時点では勘定できない。ステークホルダーの健康と安全確保が第一」と広報がコメントを発表した。
「10年かけて革新的な企業文化を形成できた」
高岡社長は冒頭、2010年から2019年のトップ在任期間中の実績の振り返りとして「“マーケティング経営”という形で、デジタルトランスフォーメーション(DX)を駆使しながら顧客の問題解決と発見に努めてきた。社会全体が取り組む以前から、従業員の働き方改革も実践できたのでは」と総括した。
なかでも、従業員が革新性あるアイデアを競う社内コンテスト「イノベーションアワード」は、高岡社長自身が「最も気に入っている施策」として言及した。「成功体験とともに失敗を重ねることでイノベーションは起こせる。自分自身のそういう考えを社内に根付かせることができた。やり残したことはありません。やりたいことはいっぱいあります」と笑顔を見せ、「10年かけて革新的な企業文化の形成と生産性の高い経営を実現できた」と振り返った。
今後の進退については「ネスレを卒業しても現役を続けたい」と話し、他社への引き抜きや社外取締役への就任は否定。基本的には“個人”として活動していく意向を示した。
「DXを多様な業界に役立てていただけるような役割を果たしていきたい。大手デジタルマーケティング会社やスタートアップ企業とともに、各社のクライアント企業の課題解決やパートナー企業選定のアドバイスをしていきたい。そもそも、DXは社長の仕事であるべき。プロデューサーとして、その決断のお手伝いをしていく」と今後の活動について明かした。
「CSVをすべての戦略の根幹に」
続いて、深谷新社長は就任にあたっての方針を発表した。「安全かつ環境にも配慮された、スピーディーでイノベーティブな製品に加えて付加価値の高いサービスを提供する。その結果、ステークホルダーのクオリティ・オブ・ライフの向上を目指す」と述べた。キーワードとしては、Eコマースの積極活用、製品のプレミアム化、外食ビジネスの強化、オフィスチャネルへの注力などを挙げた。
「強固な製品ブランドや、イノベーティブなカルチャーがあふれる職場は資産。これらを活かしつつ、すべての戦略の根幹にCSV(共通価値の創造)をと考えている」と話すとともに、「ネスカフェアンバサダーなど、この10年の成功にとどまっていては成長できない。壊すべきものは壊し、改善し、ネスレ日本を次のステージにもっていきたい」と力強く宣言した。